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読売ウイークリー

サラリーマン必読 私鉄・地下鉄VSJR「延伸」大競争時代

激変する通勤路線

 首都圏の鉄道事情は、ここ数年で激変する。小田急ロマンスカーが平日、都心のビジネスマンの足となり、乗り換えなしの東横―西武・東武ラインが初めて登場する。団塊世代の大量退職で、鉄道各社による乗客獲得競争が激化し、延伸、相互直通運転、新線の設置が相次ぐのだ。通勤、通学のルートや住まい選びには要注意である。

本誌 秋本 宏/撮影 中山博敬

小田急
湯島発ロマンスカーで都心から湘南へビジネスの足に

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通勤の足となっているロマンスカー。湯島発の運行で、新宿発にどう影響が出るか

 2008年春、東京メトロ・千代田線の湯島駅始発のロマンスカーがビジネス特急として始動する。新型ロマンスカーの愛称は「MSE」(マルチ・スーパー・エクスプレス)。乗客578人を定員とする10両編成で、月曜から金曜日の夕方から夜間の時間帯に、湯島駅から町田、相模大野方面に運行する。土日の運行については現在、詰めているところだ。

 ロマンスカーは現在、小田急・新宿駅を始発に箱根、江の島方面へ運行しており、年間約1300万人が利用している。始発駅が、小田急線と相互直通運転(以下、相直運転)している東京メトロ・千代田線にさかのぼって、湯島駅となるわけだ。

 小田急、メトロともMSEの具体的な運行開始日、本数、停車駅、料金は未定としているが、鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは、こう見る。

 「大手町のビジネスマンや、霞が関の役人などをターゲットにしているので、ロマンスカーは湯島を出発後、新御茶ノ水、大手町、日比谷、霞ヶ関、赤坂、表参道に停車する。代々木上原は乗務員交代のみの停車で、あとは町田、相模大野までノンストップになると思います」

 小田急が狙うのは、神奈川県の藤沢、小田原方面から都心へ通勤する層だという。

 「藤沢と小田原は、JRと小田急で競合しているので、湘南方面の乗客を引き寄せることに狙いがある」(梅原さん)

もはや通勤の足

 というのも、ロマンスカーは箱根への観光の足として知られるが、すでに通勤の足としても定着している。

 小田急線・新宿駅ロマンスカーのホームの平日午後5時40分、電光掲示板に赤い文字で「満席」と表示された。午後6時発の箱根湯本行きのロマンスカーの指定席が、発車20分前に売り切れたのだ。午後6時以降のロマンスカーは、ビジネス特急「ホームウェイ」(10両編成、定員588人)と呼ばれ、終電の午後11時43分発の町田行きまでほぼ「満席」状態が続く。

 「携帯電話から特急券を予約、購入できることが利用客拡大につながっている」

 小田急電鉄広報部の平林剛樹・課長代理は、そう解説する。特急料金は新宿―新百合ヶ丘、町田、相模大野間でいずれも400円。午後9時までの帰宅ピーク時には、新宿発の小田急線を使う乗客の約30%が、このホームウェイを利用しているという。ホームウェイは1999年に登場し、運行本数は開始当時の12本から17本に増えている。

 こうした実情を踏まえ、満を持しての湯島発の登場である。小田急は東京メトロ・千代田線と相直運転を開始した78年から、地下鉄発のロマンスカー運行に期待感を寄せていた。特急料金は、新宿発のホームウェイとほぼ同じという。

 ところで、なぜ大手町や霞ヶ関ではなく、湯島発なのか、不思議に思う人も多いだろう。

 これは、湯島駅に車両を収容するための路線「留置線」の設備があるためだ。平林さんによると、この留置線があると、車両の折り返しができ、綾瀬―代々木上原間で活用できる「留置線」のあるのは湯島駅だけなのだという。

私鉄・地下鉄・乗降客ベスト20、JR東日本・乗客人員ベスト20(05年度)

JR
湘南新宿ライン拡充で横浜―新宿ラインを死守

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湘南新宿ラインの利用者は増加する一方だが……。対抗するのは私鉄各線

 湘南地域と都心を結ぶ注目路線は、小田急だけではない。JR湘南新宿ラインの対抗として私鉄各社が次々と戦略を繰り出してくる。

 背景にあるのは、乗客の流れが、かつての東京中心から新宿、池袋など都心縦断型に変化していることだ。

 現在、首都圏の駅で1日の乗降人数が最も多いのは、新宿の約347万人だ。渋谷283万人、池袋262万人など、いずれもJRと複数の私鉄との乗り換え駅が並ぶ。横浜も205万人で多い。一方、東京駅は105万人に過ぎない。本社を丸の内、大手町から品川やさいたま新都心などに移す企業が増えたことなどが原因だ。

 この新宿を中心とする私鉄の牙城に割って入ったのが、01年12月に運行を始めたJRの湘南新宿ラインだった。

 湘南新宿ラインは、新宿副都心経由で都心を縦断する通勤、生活路線だ。従来、JRの都心縦断路線は京浜東北線など東京、上野経由だったが、旧国鉄時代に整備された貨物線を利用して横浜―新宿を結んで新宿経由で、上野を起点とする宇都宮線、高崎線と、東京を起点とする東海道本線、横須賀線を結んだ。

 横浜―新宿間は快速なら30分で従来の品川経由より時間も乗り換える手間も省いた。特別快速の導入で高速化を図り、グリーン車を連結することなどで通勤客の利便性を図っている。

 JR東日本によれば、湘南新宿ラインでは宇都宮線―横須賀線、東海道線―高崎線の2系統が交互に運行し、04年10月以降、1日38往復から64往復に大幅に増えた。01年12月に1日平均、約3万人(大崎―横浜間上下計)だった利用者は、現在15万人と5倍に増えた。

 後発で距離が長い路線なだけに、大宮―大船間で関連する路線でダイヤが乱れるとすぐに遅れなどにつながり、渋谷、新宿駅のホームから山手線への乗り換えに時間がかかる。こうした弱点があるものの、横浜と東京の西の玄関である新宿を、乗り換えなしの30分で行けるのは、利用者にはメリットとなった。

 さいたま新都市に関東甲信越地方を管轄する政府機関のほとんどが霞が関から移転し、大宮駅に接続する東武野田線沿線で人口が増えたため、利用者はさらに増えている。

東急
東横線の池袋経由東武・西武乗り入れで横浜―池袋圏を初実現

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東京メトロ・副都心線の開通工事で電停前にあった名物の焼鳥店もなくなった(都電雑司ヶ谷)

 この湘南新宿ラインに挑戦状を突き付けるのが、前述の小田急の湯島発ロマンスカーだが、東急も負けていない。

 東急東横線が12年度から、渋谷―池袋を結ぶ東京メトロ「副都心線」(13号線)との相互直通を始めるのだ。副都心線は渋谷から埼玉・和光市までを結ぶ路線で、横浜方面から都心、埼玉西南部へとつながる広域鉄道ネットワークが完成する。横浜から乗り換えなしで西武池袋線や東武東上線に行くラインは初めてだ。

 渋谷―横浜を結ぶ東横線は、湘南新宿ラインの影響をもろに受けた。横浜方面から渋谷乗り換えで新宿に行く人に有力な選択肢になったからだ。

 そのため、01年3月に同区間に、特急の運転を新設し、04年には横浜高速鉄道・みなとみらい線と相互乗り入れで渋谷―横浜間を中華街まで延伸するなど、両者の攻防が続いていた。

 すでに、東急目黒線では東京メトロ・南北線、埼玉高速鉄道の相互直通運転を開始して神奈川、東京、埼玉を結ぶネットワークを形成しており、副都心線との相互直通運転によって、東京の西と東で、神奈川から埼玉へ伸びる直通ラインを形成するわけだ。

 副都心線自体は、08年6月に開業する。JR山手線の池袋―渋谷間の混雑緩和を目的に、渋谷―池袋まで明治通りの下8・9キロを運行する。駅は池袋から順に、雑司が谷、西早稲田、東新宿、新宿三丁目、北参道、明治神宮前、渋谷の計8駅。通勤特急なら渋谷―池袋間を山手線の16分から約5分以上早く運行するのが、ウリだ。東武東上線や、西武有楽町線・池袋線と相互直通運転となる。

渋谷始発電車はなくなる?

 東京メトロの広報担当者が、こう言う。

 「東武、西武、有楽町線の利用者は池袋で乗り換えなしに渋谷に行けますし、池袋駅の混雑緩和も期待できます」

 東横線から副都心線や西武、東武への乗り入れが始まると、東横線の渋谷駅がどうなるのかが、問題となってくる。たとえば、「和光市発、横浜元町中華街行き」となった場合、池袋、渋谷始発の電車がなくなってしまう。「渋谷始発」の東横線が消える可能性も出てきた。

 東京急行電鉄では「まだダイヤが決まっていないので、なんともいえない」と言うが、副都心線と東横線がつながる縦断ラインが始まれば、東横線で渋谷始発が少なくなることは必至だ。

 都電・荒川線の鬼子母神前の電停付近では、現在、開業に向けて工事が進んでいる。鬼子母神前からひとつ早稲田寄りの電停、学習院下は明治通りに面しており、道路を隔てた大手製薬会社跡地には副都心線の開通を見込んで大規模な集合住宅が建った。

 東横線の相直運転は、まだほかにもある。

 2019年3月までに開業予定で、JR貨物駅・横浜羽沢―新横浜―東急東横線・日吉駅間の約10キロの路線と相模鉄道・西谷―横浜羽沢を結ぶ新連絡線とが接続する。開通後は大和―新横浜が現在の42分から19分になり、東急東横線、目黒線との相直通運転で二俣川―目黒間が54分から38分にまで短縮できる見込みだ。

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