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読売ウイークリー

新型インフルエンザ

ワクチン開発 「カギは蛾の細胞」

 新型インフルエンザ発生に備え、ワクチンの備蓄が課題になるなか、製造期間を従来より3分の1の約8週間に短縮できる製造手法が注目されている。蛾の細胞を使うもので、大量生産にも対応できるためだ。6月から治験が始まる。

本誌 渡辺理雄

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 蛾の細胞を使う製造法とはいかなるものか。

 「インフルエンザのワクチンとなるたんぱくを、大量に培養した蛾の細胞につくらせるという方法です。現在承認されているワクチンは、製造に大量の鶏卵を使っていますが、蛾の細胞が鶏卵の代わりをするのです」

 新型ワクチンの開発に取り組む「UMNファーマ」(秋田市)の林成浩取締役が、そう説明する。同社は大学などが持つ技術を活用して、新薬などを開発する医療ベンチャーで、秋田県などが関係するファンドの出資を受け、2004年に設立された。

 新型インフルエンザは、鳥インフルエンザ「H5N1型」がヒトに感染し、ヒトからヒトにうつる段階で発生するとされている。ひとたび発生すると、世界的大流行が懸念されており、ワクチン備蓄が各国共通の急務となっている。

 UMNファーマの場合、培養タンクであらかじめ増殖させた蛾の細胞に「H5N1型」の遺伝子を導入。ウイルスの感染にかかわっているたんぱくを細胞に産生させた後、これらを取り出して、純度が高いたんぱくに精製。さらに、免疫を高める薬剤などを加えて製剤化したものを新型インフルエンザに備えたワクチンとする考えだ(図解参照)。

 ワクチン開発にあたっては、アメリカのバイオベンチャー・PSC社から技術供与を受けた。

 鶏卵を使う従来の方法では、ワクチン製造に約6か月かかるが、蛾の細胞を使う方法では、約8週間ですむ。増産するには、その分の培養タンクを増やせばいいため、比較的すばやく対応できるという。

「新型の開発を先に」

 アメリカでは、前出のPSC社が同じ方法で、新型ではなく、例年冬に流行する「季節性」のインフルエンザワクチン開発を行っているが、新型向けのワクチン開発は世界初という。国内では現在、「新型」に対して2社がワクチン製造販売承認を得ているが、細胞培養による新型インフルエンザワクチンは、ほかに例がない。

 この新型インフルエンザワクチン開発については、UMNファーマが、審査を行う独立行政法人・医薬品医療機器総合機構に、新型に対するワクチンの計画を進めるように強く勧められた経過があるという。

 UMNファーマの金指秀一社長が、こう話す。

 「強い勧奨を受けて、期待に応えなければと考え、昨年秋から『新型』に対するワクチン開発に本腰を入れました。その後の行政の取り組みを見ていると、細胞培養という新しい技術によるワクチンの必要性を国も重要視していたのではないかと思っています」

 治験では6月から、ワクチンを20〜40歳の健康な男性125人に4週の間隔をおいて計2回投与する。初回の投与から56日目に採血して、感染を防ぐ働きをする免疫の抗体が体内で増えているかどうかを調べる。

 「実際のデータを得ないと分からない部分がもちろんありますが、PSC社のデータを参考にすると、既存のワクチンと同じレベルには達するだろうと思っています」(金指社長)

 細胞培養によるインフルエンザワクチンは、欧米のメーカーで、イヌやアフリカミドリザルの腎臓細胞やヒトの網膜細胞を使った開発が進められているが、まだ実用化には至っていない。

 UMNファーマでは、治験と並行して、製造施設の建設にも着手。国の承認を受けてすぐ、2010年にもワクチンの量産に移れる準備を整えている。

 「計画中の製造施設は、年1000万人分のワクチンの製造能力ですが、年1億人分のワクチンを用意できるように、施設の拡大も検討していきたいと思っています」(金指社長)

 ワクチン開発が新型インフルエンザの発生に、間に合うように祈るばかりだ。