短評
『海を渡る蝶』 松永高寛写真集
柳田国男の遺著『海上の道』は風の話で始まる。
渡海の船を安らかに港に迎えさせ、珍しい品々を
島から島へ渡る蝶の目線で日本を見てみたい――そんな序文が置かれた写真集である。五島列島や奄美大島の教会に始まり、かつて戦火の中にあった南島の自然や穏やかな浜を経て、日本海沿いの雪景色へカメラは移動する。さらに終盤は転調し、重厚な樹皮の接写が続く。撮影地は広島。実は被爆樹であるらしい。
海からの恵みの一方で、日本の対外交渉史はしばしば苛烈でもあった。その時間の厚みが畳み込まれた光景を、写真家は静かに見つめる。蝶のようなとらわれない移動と、無心の目によって。息絶えた蝶のむくろで幕を下ろす本写真集は、荘重な余韻を残す。(蒼穹舎=(電)03・3358・3974、4600円)(前)
(2012年2月13日 読売新聞)
- 『日本を追い込む5つの罠』 カレル・ヴァン・ウォルフレン著 (5月21日)
- 『夫婦の手紙』 北海道松前町「夫婦の手紙」実行委員会編 (5月21日)
- 『石と光 シトーのロマネスク聖堂』 六田(むだ)知弘写真集 (5月14日)
- 『寄り添う般若心経』 文・松兼功/写真・小野庄一 (5月14日)
- 『栗谷川健一 北海道をデザインした男』 鎌田享著 (5月14日)
- 『サーキュレーション ―日付、場所、行為』 中平卓馬写真集 (5月1日)
- 『ロシア宇宙開発史』 冨田信之著 (5月1日)
- 『その話し方では軽すぎます!』 矢野香著 (5月1日)
- 『動物たちの130年』 解説・監修 小宮輝之 (4月23日)
- 『40歳から輝く男がしていること』 川北義則著 (4月23日)
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