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2月の店主は太田光さんです

1冊から広がっていく世界


 高校時代、日曜になると神田神保町の三省堂に行って一日中、本を眺めて過ごしていた。

東京・江東区の日本科学未来館で

 学校では友達がいなかったから本ばかり読んでいて、藤村、太宰、亀井勝一郎、本好きになるきっかけになった人の本に出合えたのも、この頃だった。

 当時、三省堂の上のフロアには視聴覚室のような部屋があって、色々なビデオテープを1本いくらかのお金で見ることができた。レンタルビデオもなかった時代。チャプリンの短編映画はほとんどそこで見たかな。

 大学の頃は、新宿の紀伊国屋書店にもよく行った。本も読めるし、紀伊国屋ホールで夢の遊眠社とか、好きな劇団の芝居が見られるのも良かった。言ってみれば、そんな「併設型」の書店が好きだったのかもしれない。

 今はほとんど、インターネットの「アマゾン」で本を買っている。本屋に立ち寄らないと買わない本も多分、いっぱいあるだろうし、買い逃すことも多いとは思うけれど、本屋では書棚に並ぶ本以外の本は、すぐにたどれない。ネットだったら作家名などで検索することで、関連する本をどんどんつなげて一度に買える。本屋に行く回数は全然、少なくなった。

 俺は文学だけじゃなく哲学、物理、何でもジャンルを問わず好きなので、例えば小林秀雄が文章の中でユングの名前を出したら、じゃあ次にユングの本を読んでみようとか、『本居宣長(もとおりのりなが)』を読んだら『古事記』に行ってみたりとか。1冊の本から、どんどん広がっていく読み方をしている。

 俺が本屋を作るなら、そんな「つながっている」本を棚にそろえたい。今で言うと『もしドラ』を読んだ人が興味を持ってドラッカーの本を読む感じ。村上春樹って、あの人よく小説の中に音楽を出してくるじゃない。じゃあ、村上の小説に出たビートルズの曲のCDを隣に置いておこうとか。そうやってたどれるのは、きっと面白い。

 あと、喫茶店は絶対、必要だね。三省堂でも、本買った後に喫茶店入って、読みながらコーヒー飲むというのが、本当に幸せだった。今風のカフェじゃなくて、座り心地の良いソファがあって、ずーっといられるような喫茶店を併設したいかな。(談)

 おおた・ひかり 1965年、埼玉県生まれ。88年、田中裕二と漫才コンビ「爆笑問題」を結成。テレビ、ラジオのレギュラー多数。小説家としては2010年、短編集『マボロシの鳥』(新潮社)でデビューし、12年1月、『文明の子』(ダイヤモンド社)を出版。

店主の一冊

●『僕らは星のかけら』(マーカス・チャウン著、ソフトバンク文庫、900円)ガリレオから最先端の量子論まで本当に分かりやすい解説。『文明の子』を書く時にも影響を受けた。きっと色々なきっかけになる本だと思う。

●『007 白紙委任状』(ジェフリー・ディーヴァー著、文芸春秋、2380円)007を当代トップ作家が世代を超えて書き継いでいる。ボンドが現代の電子機器を駆使。

●『日本沈没(上・下)』小松左京著、小学館文庫、各571円)これは今読むとぐっと来る。パニック小説のイメージがあるけど、実は全然違う。すごく学術的な本なんですよ。

●『円朝(上・下)』(小島政二郎著、河出文庫、各950円)客とのコミュニケーションが楽しくて、すっと力が抜けた時の円朝の快進撃。我々のレベルでも何となくわかる。

●『みつばちマーヤの冒険』(ワルデマル・ボンゼルス著、国土社、1600円)割と大人向けの小説。この本がきっかけで色紙には「未来はいつも面白い」と書いてます。







2012年2月14日  読売新聞)

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