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コラム

ポケットに一冊

私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。

 海底地震学の世界的な権威が、勤務していた北海道大学所有の地震計を勝手に売却したとして2006年2月、逮捕される。無罪を主張し続けた著者がつづった、逮捕から保釈まで171日間にわたる“獄中記”である。

 拘置期間中は、常に看守に監視され、規則にがんじがらめにされるという屈辱的かつ不自由な生活を強いられる。容疑を否認していたゆえの接見禁止で、家族とも会えず、新聞や雑誌も読めない。

 しかし、収容された独房も過去に乗った観測船のキャビンより広くて揺れないから「まだマシ」とプラスに考え、ものは経験とあらゆるものを細かく観察する。配膳(はいぜん)されるレトルト食品には味の素製品が多いとか、取り調べ中の検事の「お疲れ」の表情とか……。心中穏やかならざる日々であったに違いないが、その強靱(きょうじん)な精神力には恐れ入る。

 懲役3年、執行猶予4年の有罪判決に控訴を断念。筆舌に尽くしがたい無念と引き換えに手にした「自由」で、この本を著した。“獄”に入る予定のない人も、知っておくべき話である。(講談社文庫、533円)(正)

(2008年1月9日  読売新聞)

『私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。』

  • 島村英紀
    出版社:講談社
    発行:2007年10月
    ISBN:9784062758673
    価格:¥560 (本体¥533+税)
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