アフリカを舞台に巨匠が新作
『ミッション・ソング』 ジョン・ル・カレ
(光文社文庫、857円、加賀山卓朗訳)
このコーナーでは珍しく、巨匠の最新作をご紹介します。
物語の背景は、コンゴ民主共和国の混乱。これに乗じて様々な人が利権を狙い、主人公のサルヴォが翻弄されます。
サルヴォは、アイルランド人宣教師とコンゴ人女性の間に生まれた子ども。複雑な国家事情を象徴するための設定と見たが、いかがでしょう。サルヴォの精神的な揺らぎが、コンゴの不安定な状況と重ね合わさって見えます。
主人公の職業が通訳、というのも素晴らしい着想ですね。あらゆる交渉の舞台裏を知りながら、影の存在である通訳が、自分の故郷に関する重大な秘密を知った時にどう動くか、という設定がスリリングです。
故に、全体の3分の2ぐらいまで動きが少ないのに、すごくダイナミックな印象になるんですよね。最終的には、故郷を思う正義感がサルヴォに大胆な行動を取らせ、悲劇を生みます。
アフリカは最近、ミステリーの舞台として注目の的です。特にロジャー・スミスは『血のケープタウン』(2010年)、『はいつくばって慈悲を乞え』(11年)で、「南アフリカノワール」とでもいうべき暗黒の世界観を確立しました。
民族・政治・宗教などの複雑な事情を持つアフリカは、特に謀略小説・スパイ小説の魅力的な素材なのでしょう。東西冷戦終了から20年余、世界にはまだまだ、小説の舞台があるものです。個人的に、今後は中南米に注目したいですね。
1931年生まれの著者のル・カレは、今年がデビュー51年目。国際政治のリアルな状況を背景にしたスパイ小説で、ベストセラー作家になりました。特にジョージ・スマイリーを主人公にした作品群は、日本でもファンが多い。
成功に甘んじず、なおも新しい素材で書き続けているわけで、本書は作家の執念も感じさせる力作。ぜひ、見習いたいものです。
通訳のサルヴォは、コンゴを巡る会議に潜む邪悪な意図に気づき、孤独な情報戦を始める。
たっぷり怖い。マイナス12点の理由=静かかつスリリングな展開が魅力。マイナス12点の理由=独特の文体は、少し読みにくいかな。

堂場瞬一:1963年生まれ。警察、スポーツ小説で活躍。代表作に「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ。
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