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出版トピック

苦境に立つ地方書店に光を

 個性派書店として知られる青山ブックセンター(ABC)の青山本店と六本木店が9月29日、閉店から2か月半ぶりに再開を果たした。写真集や美術書など洗練された本が目を引く本店には、午前10時の開店直後からファンが途切れなく来店した。にぎわいの戻った店内を歩きながら、ちょうど2年前に見た光景を思い出していた。

 東北の書店事情を巡る取材で、2000年に閉店した青森県弘前市の老舗、今泉本店を見せてもらった。シャッターを閉め切った真っ暗な店内に明かりがつくと、主を失った棚が亡霊のように浮かび上がる。郷土の本のコーナーに返却先不明の数十冊の自費出版本だけがポツンと残されていた。

 1892年に創業した青森県最古の書店は、郷土出版も積極的に受け入れ、地元の文化人の交流の場にもなっていた。しかし、東京の大型書店の出店や商店街の衰退に抗し切れなかったという。「地域文化への貢献を社是に頑張ってきたが……」と6代目社長の無念そうな言葉に、なんともやりきれない思いがした。

 東京の都心で最先端の文化の発信地でもあったABCの再開劇は、学者や編集者の支援署名を呼びかけたり、文芸誌2誌が特集を組むなど、大きな反響を呼んだ。だが、地域に密着してきた地方書店の苦境も忘れてはいけない気がする。

 最近、ニュースをにぎわせている全国のマンモス書店の出店ラッシュも、政令市など大都会が中心だ。「地方では書店が消え不便な所も多い。地域から総合書店がなくなり、雑誌を売るコンビニだけになっていく状況がいいことだろうか」。出版業界紙「新文化」の丸島基和編集長からは、先日そんなつぶやきを聞いた。

 2年前の東北取材で唯一救われたのは、松久淳、田中渉『天国の本屋』を発掘したことでも知られる盛岡市の中規模店、さわや書店本店を訪ねたことだ。普通なら新刊が並ぶ店先で、年に何度かみすず書房や東洋文庫など地味な人文書のフェアを行っており、盛況だった。

 「もっともらしいベストセラーを売り込んでも面白くない。普段、日の目を見ない本を1番いい場所に出すことでお客さんを引きつける」。伊藤清彦店長の自信にあふれた声を思い出す。

 同じように、大書店化の波や読書離れと必死に闘っている本屋さんが、あなたの町の近くにもいるはずなのだが。(佐藤 憲一記者)

(2004年10月1日  読売新聞  無断転載禁止)