親しみやすく添削・鑑賞
短歌や俳句を始めようとする時に、多くの人が手にする入門書。一見、似ているようでも、それぞれに工夫を凝らし、著者の個性、時代の変化を感じさせるものも少なくない。最近刊行されたものの特色は?(小屋敷 晶子記者)
俵万智さんの『考える短歌』(新潮新書、660円)は、季刊誌に連載中の投稿添削コーナーを元にした1冊。テーマ別の8つの講義に、現代秀歌の鑑賞を毎回加えた。言葉の持つ感触や効果をやさしく、的確に読み解く語り口は、1993年刊で定評ある『短歌をよむ』(岩波新書)に通じる。挙げられたテーマは、現在形を活用しよう、表現をあいまいにする助詞「も」や「の」はよく考えて使おう、など、散文を書くうえでも参考になる内容が多く、俵版「文章読本」といううたい文句にも納得だ。
「実践と鑑賞が入門書の2本柱」と話すのは、3冊目の入門書『楽しく始める短歌』(金園社、1360円)を出した田島邦彦さん。明治以来の短歌入門書40余冊を再読したことがあるという。「明治・大正期は歌話的な手引書が主で、本当に初心者向けのものが出始めたのは戦後。今は、出版社側からできるだけやさしく書くよう求められる」。読みやすいよう、小項目分け、多色刷りなどの視覚的な工夫が一般化した。「最近は、添削例や実作例に初心者の作品を多く使って、より親しみやすくする傾向がある」と言い、自身の本でも、作歌歴5年以内の短歌教室の生徒の歌を多く引用している。
池田はるみさん編・著『今日から始める短歌入門』(家の光協会、1300円)では、鑑賞の対象としても短歌講座の受講者や投稿者の作品を豊富に引用した。作歌時の思いに着目し、作者の一言を取り上げた章もある。歌会などでの相互評の際の参考になりそうだ。
メールやファクスで歌をやりとりする歌会で生まれた短歌を、穂村弘さんと東直子さん、それに会を主宰する雑誌編集者の沢田康彦さんが批評する『短歌があるじゃないか。』(角川書店、1300円)は広い意味での入門書。会員の歌歴や技量は様々で“怪作”も生まれる。お題が「きらきら」「人類史上最大の発明とは何か」とユニーク。こんな短歌もあるのか、と意識が変わりそう。興味がわいたら、同じ3人の前作『短歌はプロに訊け!』(本の雑誌社)、穂村さんの入門書『短歌という爆弾』(小学館)との併読をおすすめしたい。
「発表方法」にも重点
俳句にも個性派が見られる。大井恒行さんの『俳句』(西東社、1000円)は「今という時代を呼吸している俳句を作っていただきたい」と前書きにあり、引用句が新しく、前衛的作風まで幅広い。カラー写真を用いた視点の説明、メール連句などが目新しい。
入門書の手法の1つQ&A方式を、あえて中心に据えた石寒太さんの『俳句 はじめの一歩』(リヨン社、1900円)は、技術論から歴史・本質論までを質問と答えの中で説く。
『無敵の俳句生活』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション、1600円)は一昨年の刊行だが、執筆者が全員2、30歳代。先輩俳人へのインタビューや俳句総合誌読み比べなどの企画に、本格的な俳人を目指す熱気を感じる独自性ある1冊だ。
短歌入門書を含め、共通する特色は「どう発表するか」についての解説が懇切なこと。定番の結社への入会、句歌集の作り方ばかりでなく、新人賞やインターネットについても詳しい。自作を発表したいという意欲の高まり、発表の場の多様化を映しているのだろう。
(2004年10月13日 読売新聞 無断転載禁止)
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