情報内容を書籍化
インターネットの普及は「活字離れ」を助長しているか。否、という調査結果がある。ネットユーザーに限っては文字と接する時間が確実に増えており、しかも小説などの長文は「ディスプレーの画面よりも紙の本で読みたい」という人が多いのだ。そんな実情を先取りする形で今年8月、ネットの情報内容(コンテンツ)を本にする出版社が誕生した。低迷する出版業界に投じられた一石は、幾つかの点で未知の可能性を秘めている。 (永井 一顕記者)
ベンチャー設立の「アメーバブックス」書き手も発掘
〈インターネットの感動をあなたの本棚に〉とアピールする「アメーバブックス」(東京都渋谷区)。設立した親会社のネット広告企業「サイバーエージェント」(藤田晋社長)は、楽天やライブドアのようなネットベンチャー企業だ。
ホームページ、メール、チャット、メルマガ(メールマガジン)、そして「ブログ」。ネットに無関心な人には意味不明だろうし、知っていて活字文化とは認めない人もいる。確かに、たわいもない内容のものが大半だが……。
アメーバブックスの編集長は、若い世代にもファンの多い作家・ミュージシャンの山川健一さん(51)。日々、ネット上を飛び交う無数の文章を「新しい言葉の文化」と評価する。
「ブログなどの利用者は毎日大量の文章を読み、自分の考えを盛んに文章で発信しています」。匿名が原則のブログだが、表現力や創造力を発揮して多くの愛読者を抱える人気「ブロガー」もいる。書き手を発掘して「作品」を書籍化するアメーバブックスは、取次会社を通さない独自の流通経路でも注目を集める。
冒頭に紹介したアンケートは同社が先月、ネットユーザーを対象に行ったものだが、3人に1人が「作家デビューに関心あり」と答えているのが印象的だ。
作家になるには新人賞に応募するか、出版社に作品を売り込むしかなかったのも今は昔。本になるかどうかは事実上、編集者よりもネット上の読者=ファンが決める時代らしい。
ここ数年、田口ランディや市川拓司らネット出身作家の活躍が目立ち、今年はネット掲示板への投稿だけから成る『電車男』(新潮社)がベストセラーに。大手出版社もネットで反響の大きい「作品」には熱い視線を注ぐ中、アメーバブックスの戦略には相当な「勝算」がうかがえる。
第一弾として、山川編集長自身のブログによる新著『イージー・ゴーイング』など2冊を10月末に刊行したが、続いてデビューする予定の無名・匿名の新人らもネット上ですでに何千、何万という「潜在購買層」を擁しているのだ。
「人気ブログをそのまま本にしたのではダメ。従来以上に編集技術の高さが求められます」「将来は、ネット出身で『文壇』には加わらない匿名作家も増えるでしょうね」と編集長。
パソコンには、埋もれた才能を世に知らしめる“機能”も付いていたわけだ。さえない同僚が実は大ベストセラー作家、などということが今後は身辺で増えていくかもしれない。
ブログ Weblog(ウェブログ)の略で「ホームページ上の公開日記」のこと。だれでも簡単に開設でき、他人の感想を読んだり互いのブログを行き来したりする機能があって、ここ1―2年で利用者が急増している。
(2004年12月15日 読売新聞)
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