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新書にカラフル装丁登場 “飽和市場”に新風?

写真の拡大簡素を旨とする教養新書の世界に、花柄などのカラフルな装丁が登場し始めた(中央の列)
簡素を旨とする教養新書の世界に、花柄などのカラフルな装丁が登場し始めた(中央の列)
簡素を旨とする教養新書の世界に、花柄などのカラフルな装丁が登場し始めた(中央の列)

 最近、書店の新書コーナーがちょっぴりカラフルになった。花柄をあしらったり、全冊色を変えてみたり。これまで内容本位で、装丁に凝ったと思わせないのが主流だったが、新たに登場した“おしゃれ派”の装丁は、飽和状態とも言われる新書市場を活性化できるかどうか。(西田 朋子記者)

 千代紙を切り張りしたような、少しレトロなカバーが目をひくのは、筑摩書房が1月に創刊した「ちくまプリマー新書」。桜色、うぐいす色といった和菓子を思わせる色合いは女性に好まれそう。空想と遊び感覚に満ちた本の著者として人気のクリエイター「クラフト・エヴィング商會」が装丁を手がけている。

 「“おじさんメディア”だった新書を、もっと若い人や女性に読んでもらいたくて」と、松田哲夫・同新書編集長は意図を説明する。1冊ずつデザインを変え、手が込んでいるようだが「製紙や印刷、表面加工の技術革新で、大幅なコスト増でもない。モノとしての本の楽しみを、新書で提供したっていい」。

 「講談社現代新書」は40周年を機に昨年10月、人気グラフィックデザイナー中島英樹氏に依頼してデザインを一新した。こちらも1冊ごとに違った色を、表紙の中央と背表紙にあしらう。書棚に並べると、背表紙が色とりどりのストライプ模様を描き出す。

 「半年しかもたない季節商品でなく、ロングセラーを送り出すという意思表示を込めて、『20年後に見ても斬新なデザインを』とお願いしました。色の数は無限なので、全作品、色を変えるつもり」と上田哲之・同出版部長。クリーム地に挿画を配した旧デザインは33年も親しまれてきただけに反発もあったが、少しずつ定着してきたという。

 日本文芸社が先月、創刊した「パンドラ新書」の表紙も目立つ。テーマに合わせたイラストや写真で、親しみやすい雰囲気を醸し出す。

 一方で、オーソドックスな装丁も健在。やはり先月創刊の「祥伝社新書」は、パールグレーの表紙中央にずばりとタイトルを置く。中高年男性向けの実用性に富むシリーズ。「シンプルな装丁なら、介護、医療といった問題から趣味の分野まで対応できる。新書の装丁は、料理に例えるなら白い皿であるべきだ」と水無瀬尚・同社編集委員。

 ちくま新書、PHP新書、文春新書、平凡社新書、集英社新書、新潮新書……新書戦争と呼ばれた90年代以降、新規参入はなおも相次ぐ。有名デザイナーを起用した例もあるが、従来のデザインはおおむね2パターンに分けられそう。紺、深緑といった濃色にタイトルを白抜きするか、グレーや白など淡い色にくっきり黒字で目立たせるか。特に時事性を旨とする場合、題名のインパクトが売れ行きを左右するという事情がある。

 もともと新書は軽装化、同一規格化によって、教養書を手軽に提供する目的で生まれた。1938年創刊の岩波新書が先駆けで、洋書のペーパーバックにヒントを得たとされる。内容勝負、実質本位といった美徳は、出版社の垣根を越えて脈々と受け継がれてきた。

 ところが消費者の低価格志向を反映し、近年は“一般書の廉価版”的役割も担うようになってきた。加えて刊行点数は10年前の1・5倍に増えたのに総発行部数は横ばい状態。市場は飽和状態、かつ混迷を極めている感がある。

 「新書の可能性を広げよう」とタブーに挑戦する“おしゃれ派”と、「簡素な方が読者の心に響く」と主張する“質実派”と、見た目も多様化する新書業界。どちらが支持を集めるのかは未知数だが、内容を含めて、コンセプトを明確に伝え得た新書がやはり生き残っていくのではないだろうか。

(2005年3月2日  読売新聞)