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夕刊連載小説「空より高く」9日スタート 重松清さん

「失敗しても 始める方がいい」 ジャグリング主人公とともに練習の日々

 直木賞作家、重松清さん(41)の夕刊連載小説「空より高く」が9日からスタートする。今を生きる子供たちをリアルに描く名手が、真正面から挑む青春小説だ。西洋の大道芸ジャグリングに、若者だったすべての世代の夢を託す作家に聞いた。(佐藤 憲一記者)

 「僕らの若いころはマンガやテレビもまだ新しかったし、世紀末までは一種の疾走感があった。でも、今の十七、八歳の連中って、社会の『終わり』や『あきらめ』ムードに流されてしまって何かを始める楽しさを知らないんじゃないかな」

 『エイジ』『ナイフ』など少年の視点で傑作を送り出してきた重松さん。小説デビュー14年目に、「少年ものの集大成」的作品を手がけるのは、「穏やかに終わるより、失敗しても何か始めるほうがいい」という時代へのメッセージを伝えたいからだ。

 舞台は、重松ファンおなじみの「ニュータウン」。かつての新興住宅地も老いの季節を迎え、開校25年で閉校になる高校は、閉塞(へいそく)感の覆う現代の映し鏡なのだろう。何となく過ごしてしまった高校生活に物足りなさを感じていた最後の3年生、ネタローは夏休み最後の日、駅近くの広場で白塗りのピエロと出会う――。

 ネタローたちが残り半年の青春をぶつけるのは、ボールやスティックを投げ上げる妙技で観衆を魅了するジャグリングだ。ユニークな大道芸に着目したのは、あるテレビ番組で、ジャグリングに熱中する子供たちを見たのがきっかけだった。

 「野球やサッカーと違って勝ち負けもルールもない自由さがいいなって思った。練習でもみなバラバラなことをしながら、まとまっている。そういう緩い連帯感にも『今』を感じる」

 『青春の門』や『ノルウェイの森』といった定番の青春小説のように大望や喪失感を抱いた主人公でも、凶悪犯罪で世間を驚かす17歳でもない。あくまで「へぼで平凡な高校生」のドラマで青春の苦さを醸し出すのが、重松さんの持ち味だ。

 「主人公がヒーローではなく、ピエロになっていく話を書きたい。ピエロってひょうきんもののようでいて、実は深い悲しみや喜びを秘めている」

 新聞小説の連載は4作目。「読者の幅の広さが新聞の良さ。お父さんも子供も、それぞれ別の味わい方をしてくれたら」。新聞小説初登場となる挿絵の唐仁原教久さんとは今春からの小学6年生の国語教科書(光村図書)でもコンビを組んだ。「風景の中に子供が溶け込む感性がとても好き」と、期待を寄せる。

 連載前、社会人や高校のジャグリング同好会を取材した。「僕もトライしたら、初めてなのに技が決まった。うれしかったですよ」。その結果、道具一式を買い込み登場人物と同時並行で練習に励む日々が続く。「40代のおじさんも何かを始めるフットワークを失っていない」ことを改めて気づかせたのもジャグリングだった。

 空より高いどこかへ。作家と高校生たちが共鳴する青春の物語が今、ふんわり舞い上がる。

(2005年3月3日  読売新聞)

『エイジ』

  • 重松清
    出版社:新潮社
    発行:2004年7月
    ISBN:4101349169
    価格:¥700 (本体¥667+税)
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『ナイフ』

  • 重松清
    出版社:新潮社
    発行:2000年7月
    ISBN:4101349134
    価格:¥620 (本体¥590+税)
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