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「大人も子どもも共有できる優れた作品」を選ぶ坪田譲治文学賞(岡山市主催)。第20回の受賞作に選ばれたのは、ベルリン在住の作家・那須田淳さん(45)の小説『ペーターという名のオオカミ』(小峰書店)だ。一時帰国した那須田さんに話を聞いた。
「子どもだけでなく、いろいろな人に読んでもらいたくて書いた作品。それを後押しされたようで、非常にうれしい」と受賞の喜びを語る。同賞は、一般文芸と児童書の別なく優れた創作作品に贈られており、先ごろ直木賞を受賞した角田光代さんや江國香織さん、重松清さんらも歴代受賞者に名を連ねる。
児童文学の奨学研究員に招へいされて以来、在独10年。『ボルピィ物語』『おれんちのいぬチョビコ』などの児童書やドイツ作品の翻訳で知られる。受賞作は、文体や体裁などを「子ども向け」にする自己規制を意識してはずし、「書きたいものを書いた」初めての作品だ。
舞台は現代のベルリン。新聞記者の父を持つ14歳の日本人少年・亮が、群れからはぐれた野生の子オオカミを親の元へ返そうと旅に出る。いや応なく意識される「国境」、そして「壁」。少年の冒険物語を主軸に、東西分裂の暗い過去をひきずる初老の男や、父親との葛藤(かっとう)に悩む日系人少年が登場し、作品を陰影深くしている。
学園・恋愛ものが主流の日本の10代向けヤングアダルト小説と比較しても、骨太な異色作。選考委員からも「社会を大きく視野の内にとらえる意志が感じられる」(高井有一氏)、「久しぶりにこくのある少年小説」(西本鶏介氏)などと評価された。
「現在進行形で『少年』を書きたい。過去からつながる戦争は意識せざるを得ないし、政治もからんでくる。そのあたりもきちっと意識して描いていくつもりです」。受賞が大きな自信につながった。
新たな「少年文学」の誕生を期待したい。(松本 由佳記者)
(2005年3月31日 読売新聞)
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