解読・関連本も多彩
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謎めいた「モナ・リザ」の微笑が表紙を飾る『ダ・ヴィンチ・コード』と関連本
ダン・ブラウン著『ダ・ヴィンチ・コード』(角川書店)が売れ続けている。名画やキリスト教にまつわる謎をちりばめたミステリーは多くの読者をつかみ、現在では映画化も進んでいる。謎解き本を含めて、出版界に旋風を巻き起こしているベストセラーとその周辺を紹介しよう。(前田 恭二記者)
ルーブル美術館で館長が殺された。死の直前に残したメッセージの意味は――そんな風に始まる宗教象徴学者ラングドンと暗号解読官ソフィーの冒険は昨年5月、邦訳が刊行され、上下巻で計175万部。謎を解くたび次なる謎が現れるストーリー展開の妙とともに、ダ・ヴィンチ作品の解釈、秘密結社、聖杯伝説といった話題が読者の好奇心をそそる面も大きいようだ。
謎解き本の売れ行きがそれを裏付ける。サイモン・コックス著『ダ・ヴィンチ・コードの謎を解く』(PHP研究所)が7万部、ダン・バースタイン編『ダ・ヴィンチ・コードの「真実」』(竹書房)が4万2千部、田辺清監修のムック『図解 ダ・ヴィンチの謎』(宝島社)も8万部と版を重ねる。もっと知りたいという気持ちが解読本に手を伸ばさせているのだろう。
既刊ながら、著者の発想源として改めて脚光を浴びている本もある。リン・ピクネットほか著『マグダラとヨハネのミステリー』(三交社)、マイケル・ベイジェントほか著『レンヌ=ル=シャトーの謎』(柏書房)など。ちなみに版画家という立場からダ・ヴィンチ作品などの謎に迫った北川健次著『「モナ・リザ」ミステリー』(新潮社)にも実はリン・ピクネットらの別の本が引用されており、彼らの論が幅広い影響を及ぼしていることをうかがわせる。
ただし名画やキリスト教をめぐって、これらの“種本”と『ダ・ヴィンチ・コード』が展開する独自の解釈については、批判的な意見も併せ読まれるべきかもしれない。その意味では、先に挙げたバースタイン編の解読本が冷静な見方を収録するほか、「新潮45」誌4月号に載る竹下節子氏の論考が一読に値する。
巨匠ダ・ヴィンチその人については、美術史の成果を紹介しておこう。古典的な名著はケネス・クラーク著『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(法政大学出版局)。近年だと片桐頼継著『レオナルド・ダ・ヴィンチという神話』(角川選書)が万能の天才というイメージを相対化し、実像を探っている。アレッサンドロ・ヴェッツォシ著『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(創元社)も入門書として優れる。このほか論文を集成した田中英道著『レオナルド・ダ・ヴィンチの世界像』(東北大学出版会)も最近、刊行された。
関連本を読んだ印象だと、巻頭に〈芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている〉と掲げる『ダ・ヴィンチ・コード』とはいえ、基本的に一つの物語として受け止める方がよいのだろう。だが逆に、興味をそそる異色の説、美術や歴史の知識を難なく読ませて、息もつかせぬミステリーに仕立てた才覚については改めて感心させられる。
美術史とミステリーの関係をめぐる著者の直感がそれを可能にしたふしもある。主人公の宗教象徴学者ラングドンの持論は〈結びつきは目に見えないかもしれないが、表層のすぐ下にかならずひそんでいる〉。視覚的な情報のうちに秘められた意味を探る美術史と、与えられた証拠から見えざる真実に迫るミステリーは意外に似た志向を持つ。その両者を縦横無尽に掛け合わせながら、スリルを加速させていくことで、近年出色の美術ミステリーとなったのかもしれない。
(2005年4月6日 読売新聞)
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