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コミック売り場に行くと、時々「箱」のようなものが積み重なっている。コミック単行本にキャラクターフィギュアを同梱(どうこん)した「おまけ付き」である。値段も高いが、限定販売なので人気も高い。事前予約で完売するものもある。
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文庫版「終戦のローレライ」のおまけフィギュア(奥の3点)と、8月に書店に並ぶ「いそかぜ」フィギュア。出来は素晴らしい
その「箱」が、文庫売り場にまで出現した時は驚いた。福井晴敏の小説「終戦のローレライ」文庫版(全4巻)とフィギュア3種のBOXセット(3800円)。版元の講談社は「文庫業界で初」と胸を張るが、小説本でフィギュアをおまけに付けること自体、聞いたことがない。造形は海洋堂で、主役の潜水艦、小型潜航艇、ヒロインの少女とも、さすがの出来ばえ。1万個限定で、予約と合わせ2週間で完売したそうだ。
出版不況の打開策として、雑誌のおまけ規制が緩和されたのは2001年。まず女性誌がネックレスやストッキングなどを付けた。コミック誌やコミック単行本にもペンケースやマウスパッドなどが付いたが、すぐに飽きられた。その中で、根強い人気を保ったのがフィギュアだった。特に規定のなかった書籍のおまけに関しても、最近、運用はかなり弾力的になっている。
ところで、おまけは出版の堕落だろうか? 普通に考えれば、本の中身で勝負せず、モノで釣るとは邪道もいいところである。筆者も実はそう思っていたが、やや考えを改めた。
不況下で、出版社はひたすら本を安く作ることに専心してきた。コンビニ向けコミックスや新書ラッシュがそうだ。だが逆に、「多少高くても、モノとして魅力的な本を」という欲求も読者の間で増えているように思う。浦沢直樹の漫画「PLUTO」で、通常版と豪華版の2種が同時刊行されているのがいい例だ。おまけフィギュアも、本を読む気分を盛り上げてくれるなら良し。例えば口絵のような、本の装丁の一部として見ることも可能では?
……などと考えていたら、ついに“主従”が逆転してしまった。8月に、福井氏の「亡国のイージス」に出てくるミサイル護衛艦「いそかぜ」の精密フィギュアセットが、書店に並ぶ(映画とも違う原作版モデルとのこと)。今度は文庫は付かない代わり、書き下ろし短編が小冊子で付く。この作家らしい発想だが、フィギュアのおまけに小説が付く時代とは……。やはり限定1万個で、税込み3500円。1日から書店で予約受け付け中。(石田汗太記者)
(2005年6月3日 読売新聞)
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