創作への関与 漫画家と同格
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「出版社の枠に縛られていては、ヒット漫画は出ない時代になった」と語る長崎さん
浦沢直樹さんの人気漫画『PLUTO』(小学館)の連載扉絵に「長崎尚志(たかし)プロデュース」とあるのをご存じだろうか。出版社の垣根を越えた仕掛け人、また漫画家の創作パートナーとして活躍し、業界初の「漫画プロデューサー」として注目される長崎さん(49)に聞いた。(石田汗太記者)
「鉄腕アトムの『地上最大のロボット』を、サイコサスペンスとしてリメークする『PLUTO』のアイデアは、僕と浦沢さんで考えたもの。浦沢さんとのプロット作りに加え、手塚プロダクションとの折衝も引き受けたので、プロデューサーを名乗らせてもらいました」
現時点でプロデュースとうたったのは『PLUTO』だけだが、その名は、最近あちこちの作品に登場する。同じ浦沢さんの『20世紀少年』(小学館)では「協力」、幻冬舎の新雑誌「パピルス」の『机上の九龍』(青木朋・画)では「構成」、講談社アフタヌーンの『終戦のローレライ』(福井晴敏・原作、虎哉孝征・画)では「脚色」。一体どう違うのか?
「作家と一緒にプロットを作り、作品の売り出し方や単行本の装丁までかかわるのが『協力』。『構成』は原作と編集の仕事を兼ねています。『脚色』は、小説を漫画向きのシナリオにすることですね」
さらに、「東周斎雅楽」のペンネームでアトランティス探索をテーマにした冒険サスペンス『イリヤッド』(魚戸おさむ・画)の原作を書き、「江戸川啓視」の名で中国の秘密結社に取材した『青侠 ブルーフッド』(石渡洋司・画)の原作を書く多才ぶり。「絵は描けないので、それ以外の部分で漫画家を補うのが仕事だと思っています」
もともと小学館の漫画編集者で、ビッグコミックスピリッツの編集長を務めた。浦沢さんをデビューさせたのもこの人。編集者時代から、黒子として漫画シナリオを手がけていた。「作品がつまらなかったら、しかられるのは編集者。だから必死にシナリオ作りを覚えたんです」
外からは見えにくいが、文芸編集者などと比べ、漫画編集者は創作そのものにタッチする度合いがかなり高い。「クリエイティブな意味で、漫画家と漫画編集者は作品に対して同格」と長崎さん。が、最近はそれができる編集者が少ないという。「淘汰(とうた)を勝ち抜いた漫画家に能力のない人はいない。一方、“優等生化”した編集者の力はこの10年いまひとつ。実力のある編集者は、出版社を出た方がいいというのが僕の結論です」
2000年にフリーになった長崎さんは、プロデューサーを名乗ることで「漫画編集者」のイメージを変えようとしている。「フリー編集者のエージェント団体を構想しています。漫画家も組みたい編集者とずっと仕事ができる。いばらの道かもしれませんが、業界活性化のためにも仲間を増やしたいんですよ」
大学に専門学部・学科
こうしたプロデューサー兼編集者を積極的に育てようという動きもある。2000年に全国初の「芸術学部マンガ学科」を開設した京都市の京都精華大は、06年度から同学科を「マンガ学部」に格上げ、「マンガプロデュース学科」を新設する。
同大教授で元漫画編集者の熊田正史さん(58)は、「漫画表現が高度化し、版権ビジネスも多様化した現在、漫画編集者はこれまでにない新しい仕事になっている」と指摘する。「漫画表現を100%熟知し、企画を立て、原作を書き、批評もできる編集者を育てる場がこれまでなかった。コミック誌の地盤沈下も、そういった編集者が少ないせい。長崎さんのように、フリーで活動する人が増えるのも自然の流れだろう」と語る。
(2005年7月27日 読売新聞)
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