ニュース 速報 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
@本よみうり堂メニューです
本文です

出版トピック

「新風舎」松崎義行さんに聞く 存在感増す「共同出版」

 「プロ・アマ問わず原稿を募集します」「著者と出版社の共同出資で本を出します」――著者が応分の費用を負担する自費出版・共同出版は近年、出版界で存在感を増している。特に注目を集めているのは最大手で、雑誌創刊など新機軸を打ち出している新風舎。出版に対する考え方を、松崎義行社長(40)に聞いた。(待田晋哉記者)

写真の拡大「表現する人のための出版をしたい」。新風舎直営の書店「熱風書房」で、自社の刊行物を背景に語る松崎社長
「表現する人のための出版をしたい」。新風舎直営の書店「熱風書房」で、自社の刊行物を背景に語る松崎社長
「表現する人のための出版をしたい」。新風舎直営の書店「熱風書房」で、自社の刊行物を背景に語る松崎社長

 『童女M』という詩集がこの6月、同社から出た。松崎社長が15歳の時に刊行した第一詩集を、同社のスタッフ有志が復刻したのだという。

 〈知っていますか/あなたが駆けだせば/そこにひとつの/風が生まれる/ということを〉。出版当時、松崎社長はすでに「新風舎」を名乗ったというから、まさに会社運営の原点と言ってよい。

 「僕は幼いころからずんぐりした体形で、いじめられっ子でした。でも高校1年の時、印刷所に頼んで本を刷り、学校に持って行くとヒーローになりました。自分の本を手にし、尊敬された喜びが、今の仕事につながっています」

 株式会社として発足したのは1994年。著者と出版社が費用を負担する「共同出版」方式を掲げ、昨年は、講談社に続いて年間出版点数2位の1847冊を出版した。年商は約30億円。2003年にニューヨーク支社を開設、全国4か所に直営書店を持つ。

 その一つ、東京・青山の「熱風書房」を訪ねると、瀟洒(しょうしゃ)な空間に小説、エッセー、実用書などが並んでいた。同社から出た本はすべて棚に置く方針だという。「本には、永遠の命があります。こだわり過ぎかもしれませんが、出版物の数がどれほど増えても必ず置きます。当社の都合で、本を絶版にもしません」

 ただし一般の書店だと、自費出版物が店頭に並ぶ確率は商業出版物よりも低いとされる。このため、手がける出版社の中には、書店の棚に書籍を置く権利を買い取る「棚買い」で、本を流通させる社がある。だが新風舎はこの手法を取らず、「書店と協力してフェアをするなど工夫をして売ります」と強調する。

 では自分の本を出版するには、どれほどの費用がかかるのか。同社の共同出版は印刷や装丁など本の制作費を著者側、流通経費や宣伝費などを出版社側が持つ。事例に応じて負担額は様々だが、200ページ前後の本を500部印刷した場合、著者側は100〜150万円支払うことが多い。

 こうした出版形態には「流通する本を増やし、読者に良書が届かなくなる」「稚拙な出版物を増やすだけ」という声があるが、松崎社長は「この本を出版して良い、悪いと出版社が判断していいのでしょうか」と反論する。

 「現在は出版社の都合で本が作られ、一つの本がヒットすると似た本が次々と出る。本は著者と読者の交流する場であり、僕はもっと著者に寄り添って作っていきたい」

 一昨年には文庫を創刊し、中沢けい『海を感じる時』、辺見庸『自動起床装置』など作家のデビュー作を刊行。今年5月には、町田康や西原理恵子など多彩な執筆陣が名を連ねる雑誌「少年文芸」を創刊した。無名の人々の表現欲をベースに、活動の幅を広げる同社のようなケースも出てきた自費出版・共同出版の動向は、さらに影響力を増すのではないかと予感させる。

自己発信の環境整う

 出版ニュース社の清田義昭代表の話「この数年来の自費出版ブームには、パソコンやインターネットの普及で自己発信の環境が整ったことが背景にある。会社の退職時期を迎えた団塊世代は自己表現の意欲が強く、経済的なゆとりもあるため、お金を払ってでも自分のことを書き留めたい人が多いようです」

(2005年8月3日  読売新聞)

『童女M』

  • 松崎義行
    出版社:新風舎
    発行:2005年6月
    ISBN:4797475145
    価格:¥1575 (本体¥1500+税)
    この本を買う

『海を感じる時』

  • 中沢けい
    出版社:新風舎
    発行:2005年3月
    ISBN:4797495847
    価格:¥691 (本体¥658+税)
    この本を買う

『自動起床装置』

  • 辺見庸
    出版社:新風舎
    発行:2005年2月
    ISBN:479749557X
    価格:¥691 (本体¥658+税)
    この本を買う