「電車男」「野ブタ。」ドラマ・映画と相乗効果
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ノンフィクションが巻き返し、ネット発本が目立った2005年のベストセラー
時代の深層心理を反映するとも言われるベストセラー。今年読まれた本は、2005年のどんな世相と結びつくのか。トーハン調べの年間ベストセラーを読み解くとともに、出版問題に詳しいフリーライター、永江朗(あきら)さんに聞いた。(西田朋子、佐藤憲一)
教養新書から、2冊のミリオンセラーが出た。文章指導のプロが“愚かな話し方”の傾向と対策を練る『頭がいい人、悪い人の話し方』(220万部)と、身近な疑問から会計学を学ぶ『さおだけ屋はなぜ潰(つぶ)れないのか?』(125万部)。
どちらも、学問というより実用書的な内容で、「教養新書は、従来のアカデミズム路線から大衆化されたライトな路線へはっきり移行してきている」と、出版科学研究所の綾部二美代研究員は指摘する。
4月の個人情報保護法施行に戸惑った人が多いのか、『これだけは知っておきたい 個人情報保護』は85万部と意外なヒット。他人に利用されない世渡りの極意を教える『ワルの知恵本』(70万部)や『震災時 帰宅支援マップ 首都圏版』(54万部)も、犯罪や天災の不安におびえる世相の反映だろう。ベスト10の半分が500〜800円代と、内容を絞り、手ごろな価格に抑えた本が“価格破壊”の時代に良く売れた。
文芸書は、綿矢りさ、金原ひとみの芥川賞最年少受賞に始まり、純愛ブームにわいた昨年と比べると、やや地味な印象だ。だが男女間の〈純愛〉に代わって、〈家族愛〉がブームになりつつある。『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(90万部)は、亡き母への思いをつづった自伝的小説。『ハッピーバースデー』(50万部)は、母から虐待を受ける少女が主人公の同名児童書(70万部)を、大人向けに母親の視点で書き直した。少年犯罪やニート、虐待といった家族を巡る問題への、関心の高さもうかがえる。
昨年のベスト20では『電車男』(101万部)だけだった〈ネット発本〉も、今年はよく売れた。『「もっと、生きたい…」』(100万部)、『恋バナ』(青56万部、赤57万部)の2タイトル3冊がランク入りしたYoshiの著書は、女子高生など本を読まないとされた層を取り込んだ。先月発売されたばかりの『生協の白石さん』は、早くも85万部。白石さんのユーモラスで誠実なたたずまいが人気を呼んだ。
ドラマ、映画との相乗効果で売れ行きを伸ばした本も『電車男』、『野ブタ。をプロデュース』(65万部)、『ダ・ヴィンチ・コード』(計190万部)と多かった。
綾部研究員は「読者が読みたい本を入念に市場調査して大量宣伝する出版社が増えた。また、テレビへの露出がないと本が売れなくなってきている」と分析する。ベストセラーも作られる時代――と言えば夢のない話だが。
(部数は発売時からの累積)
(2005年12月21日 読売新聞)
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