「面白さの王道」貫き ひたむきな情熱歌う
美内すずえ『ガラスの仮面』、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、細川智栄子『王家の紋章』の3作が、そろって今年、連載30周年を迎えた。単行本は合計241冊。いずれもなおトップクラスの人気を保ち続ける“怪物作品”。その持続力の秘密を3氏に聞いた。(石田汗太)
「当初は長くて2年くらいの連載と思っていた。目の前のことを精いっぱい形にしていくうちに30年たった感じで……」と美内すずえさんは語る。
『ガラスの仮面』の連載開始は「花とゆめ」(白泉社)1976年新年号。本格的に演劇をテーマにした少女漫画は例がなく、美内さん自身も詳しいわけではなかった。が、デビュー直後に見た帝国劇場の舞台に感激し、「役を演じる役者も、キャラクターを描く漫画家も、表現者という点では同じ」との信念で、天才演劇少女・北島マヤに文字通り“同化”してきた。雑誌連載は休止中だが、単行本描きおろしの形で、物語は最大のクライマックスにさしかかっている。現在42巻。
週刊少年ジャンプ連載中の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は、6月2日に単行本第150巻が出るギネス級作品。30年間休載ゼロの秋本さんは、「夫婦じゃないけど、相手(作品)の欠点、長所を理解しながら上手につき合ってきた」と語る。今年2月には、とうとうJR亀有駅前に〈両さん〉こと両津勘吉巡査長の銅像まで立った。「1話完結のギャグ漫画なので、毎週気持ちの切り替えができ、飽きなかったのが大きいです」
現代の少女キャロルが3000年前のエジプトに連れ去られ、冒険の果てにメンフィス王と結ばれる大河ロマン『王家の紋章』は月刊「プリンセス」(秋田書店)連載中。6月16日に第51巻が出る。「嫁ぎ先に単行本を持っていったファンが、『読み返すたびに青春を思い出す』と言ってくれるのがうれしい」と細川さん。祖母・母・娘の3代にわたる読者もいるそうだ。
マヤも両さんも年を取っていないように見えるが、『ガラス――』42巻には携帯電話が登場するなど、時代の変化と無縁ではあり得ない。「今どきコイン式の公衆電話では、新しい読者が違和感を持つ。通信手段の変化が一番頭が痛い」と美内さん。逆に「パソコン、ケータイ、ゲームなど、時代を利用してきた」と語るのが秋本さんだ。
76年は、ロッキード事件、天安門事件、ソ連機亡命など国内外で大事件が相次いだ。評論家の藤本由香里さんは、漫画史的にも「70年代に起きた重要な変化が出そろった時期」と見る。「萩尾望都や竹宮惠子ら『24年組』作家の登場で、漫画表現の幅と読者層がぐっと広がったのがこのころ。3作はその流れも認識した上で、オーソドックスに『面白さの王道』を貫いたのが支持されたと思う」
3作ともに「ひたむきな情熱」を歌い続けることでも共通する。30年前に比べても、夢を見つけにくい時代。この3作には、まだまだ完結を迎えてほしくないと思うファンも多いだろう。
(2006年5月31日 読売新聞)
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