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吉川英治文学賞 宮部みゆきさん

「探偵」創造、現代ものに意欲

写真の拡大握手をする宮部みゆきさん(左)と佐藤多佳子さん(1日、東京・千代田区の帝国ホテルで)
握手をする宮部みゆきさん(左)と佐藤多佳子さん(1日、東京・千代田区の帝国ホテルで)
握手をする宮部みゆきさん(左)と佐藤多佳子さん(1日、東京・千代田区の帝国ホテルで)

 第41回吉川英治文学賞は宮部みゆきさん(46)の『名もなき毒』(幻冬舎)に、第28回同新人賞は佐藤多佳子さん(44)の『一瞬の風になれ』(講談社)にそれぞれ決まった。1日の会見では、宮部さんは感激のあまり涙で絶句、佐藤さんも「予想しておらずびっくりした」と、それぞれに受賞の喜びを表現した。

 「小説が好きというだけで何も知らず、何も勉強せずにこの世界に入ってきた私を、こんなに遠くまで連れてきてくださって……」

 こう語った宮部さんはいきなり感極まって落涙、「新人時代から支えてくださった皆さんに、何度でもお礼を申し上げたい」と声を詰まらせた。

 自身、同新人賞の選考委員として、直前まで激論を戦わせていた。1992年に同新人賞を受けた『本所深川ふしぎ草紙』が出世作だったことを思えば、デビュー20周年の今年に、娯楽小説最高峰の吉川英治文学賞に輝いたことは、「深いご縁を感じる」以上の感慨があっただろう。

 『名もなき毒』は、現代もののシリーズ化を努めて避けてきた作家が、初めて「私立探偵」の創造に挑んだ連作の2作目。コンビニの飲料に青酸カリを混ぜる無差別連続毒殺事件を発端に、グループ企業の社内報編集部に勤める杉村が、現代人の心に潜む、名状しがたい「毒」の正体に迫る。

 宮部さんは、『模倣犯』以後、「現代ものを書くのがつらい」との“弱音”を時々漏らすようになった。

 「世相が変わってしまって、自分には理解できない世の中が来るんじゃないか、いやもう来ているんじゃないか、自分の書くものは、若い読者には『古いよ』と言われるんじゃないかという恐怖があるんですね」。現実に起こる事件の残酷さ、不可解さに「テーマとして逃げたくなる」こともしばしばだそうだ。

 しかし、杉村というおよそヒーローらしからぬ、家族思いでお人よしの「普通の人」を探偵として育てていくことで、作家はある突破口を見いだしたようだ。

 「普通の人が生きにくい時代だろうなとは思います。みんなが、うそでも自分に生きやすいストーリーを作りながら生きている。でも、事件や悪いことは目立つけれど、うまくいっている部分は見えにくいだけ。世の中全体が悪くなっているとは信じたくない」

 近年、時代物やファンタジーに比重をかけている宮部さんだが、「現代ミステリーを書くことはやめない」と改めて宣言した。(石田汗太)

(2007年3月6日  読売新聞)

『名もなき毒』

  • 宮部みゆき
    出版社:幻冬舎
    発行:2006年8月
    ISBN:9784344012141
    価格:¥1890 (本体¥1800+税)
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『一瞬の風になれ』 第1部

  • 佐藤多佳子
    出版社:講談社
    発行:2006年8月
    ISBN:9784062135627
    価格:¥1470 (本体¥1400+税)
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『本所深川ふしぎ草紙』

  • 宮部みゆき
    出版社:新潮社
    発行:1995年9月
    ISBN:9784101369150
    価格:¥540 (本体¥514+税)
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『模倣犯』 (上)

  • 宮部みゆき
    出版社:小学館
    発行:2001年4月
    ISBN:409379264X
    価格:¥1995 (本体¥1900+税)
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