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芥川賞に磯崎憲一郎さん、直木賞は北村薫さん

磯崎さん「終の住処」 芥川賞作家は現役商社マン
北村さん「鷺と雪」 山本周五郎賞選考委員を務めるベテラン作家

写真の拡大第141回芥川賞を受賞した磯崎憲一郎さん(15日午後9時過ぎ、東京・千代田区で)=金沢修撮影
第141回芥川賞を受賞した磯崎憲一郎さん(15日午後9時過ぎ、東京・千代田区で)=金沢修撮影
第141回芥川賞を受賞した磯崎憲一郎さん(15日午後9時過ぎ、東京・千代田区で)=金沢修撮影

 第141回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日夜、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に大手商社、三井物産勤務の磯崎憲一郎さん(44)の「終(つい)の住処(すみか)」(新潮6月号)、直木賞は山本周五郎賞選考委員を務めるベテラン作家、北村薫さん(59)の「鷺(さぎ)と雪」(文芸春秋)に決まった。副賞は各100万円。授賞式は8月21日午後6時、東京・丸の内の東京会館で。

 磯崎さんは1965年、千葉県我孫子市生まれ。早大商学部卒の現役商社マン。芥川賞は昨年夏に続き、2度目の候補だった。

 受賞作は、製薬会社に勤める50代の男と妻との二十数年に及ぶ結婚生活の歴史を描いた作品。選考委員の山田詠美さんは「主人公の過去をブロックのように積み重ねるなど知的に構築されている。小説としてしかあり得ない言葉を考え、文学への確信が伝わってきた」と評価した。

 直木賞の北村さんは埼玉県生まれ。早大卒業後、高校教師の傍ら、ミステリーの評論、編集に携わり89年、「空飛ぶ馬」で作家デビュー。91年「夜の蝉」で日本推理作家協会賞、2006年「ニッポン硬貨の謎」で本格ミステリ大賞。96年以来、6度目の候補で直木賞を射止めた。

 受賞作は、上流階級のお嬢様とハイカラな女性運転手の周りに巻き起こる事件と不気味な騒乱の予感を、昭和前期のモダンな世相を背景に描き出す作品集。選考委員の浅田次郎さんは「難しい時代を勇気をもって描き、人物も生き生きしている。余分な表現のない短い文章で読者の想像力を喚起させるうまさを感じた」と評価した。

 「受賞で小説家として書く場を与えていただけたと思う。これが大きな意味を持つ。目標は一生書き続けること。(敬愛する作家)小島信夫さんのように90歳まで書きたい」

 記者会見でそう喜びを語った磯崎さんは、三井物産に1988年に入社。鉄鋼製品本部に配属された後、米国デトロイト店駐在などを経て、現在は本社の人事総務部の次長。「企業小説を書いているわけではなく、仕事と小説は無関係だし、小説を作家の属性や肩書で見るのは安易」との考えから、これまで勤務先を明かしていなかった。

 40歳を前に「いい加減、遊んだり仕事したりを繰り返してる場合じゃない」と思い立って小説を書き始め、2年前に「肝心の子供」で文芸賞を受け作家デビュー。「芸術は世界を肯定する力を持っている。自分もその力に奉仕する一員に加わりたいと思った」

 マルケス、カフカ、ムージルら海外文学を愛読。執筆は休日や、朝、帰宅後の短い時間を活用し、睡眠時間を削ることはない。現在は、半年に1作ペースで文芸誌に新作を発表する。「仕事も小説も家庭も、一人の人間の見せ方の違いで、やってることはあまり変わらないと思います」。会社の上司は「受賞は彼の集中力のたまもの」と評する。

 妻と中2、小4の娘と4人でマンション暮らし。「会社帰り、子供たちにアイスクリームを買って帰る普通のサラリーマン」という。

(2009年7月16日  読売新聞)

『鷺と雪』

  • 北村薫
    出版社:文藝春秋
    発行:2009年4月
    ISBN:9784163280806
    価格:¥1470 (本体¥1400+税)
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