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鉄道オタクを意味する「鉄」が話題となる中、マンガ界でも、ローカル線巡りや駅舎への愛着をテーマとする作品が増えている。人々の夢や笑いを運ぶ鉄道マンガの旅へ、出発進行!(佐藤憲一)
鉄道マンガブームの火付け役は、各地のローカル線全駅下車や東京鹿児島間鈍行の旅など、こだわりの旅に挑む実録もの『鉄子の旅』(小学館)。「IKKI」誌(同)に2002年から連載されたが、それまで同分野のマンガは少なく、小学生以来の鉄道オタクという江上英樹編集長が、「一つぐらいあってもと、わがままで始めたようなもの」という。
ところが、鉄道に関心のない女性の菊池直恵さんを描き手に起用したことが成功に結びついた。旅に同行する案内人、横見浩彦さんのマニアックな言動に、菊池さんが翻弄(ほんろう)される姿が受け、アニメ化や関連イベントが企画される社会現象に。それまで男性固有の趣味と思われていた鉄道に、女性ファン「鉄子」を増やす端緒にもなった。
同誌は、綾辻行人さんと組んだ鉄道ミステリーや内田百ケンの鉄道紀行の古典「阿房(あほう)列車」のマンガ版も掲載。今年夏からは、20歳の新人、ほあしかのこさんを抜擢(ばってき)した「新・鉄子の旅」も始まり、鉄道マンガの発信元となっている。
旅情と食欲の魅力を併せ持つ櫻井寛監修、はやせ淳作画『駅弁ひとり旅』(双葉社)もお薦めだ。念願の日本一周旅行に出た鉄道好きの弁当屋の主人が、各地の駅弁巡りをしていく。さまざまな人との出会いと別れに、風光明媚(めいび)な沿線の景色が織り込まれ、旅情満点。何より、高知のかつおたたき弁当、仙台の牛たん弁当などなど、登場する駅弁がおいしそうで、生つばをためずに読めない。
伝説の鉄道オタクと女性編集者がローカル線を巡る、はしもとみつお『鉄のほそ道』(角川書店)も、人情の旅話。惜しまれつつ消えていくローカル線も少なくない中、猫の駅長やぬれ煎餅(せんべい)販売などのアイデアで、自分たちの路線を守ろうとする人々が頼もしくなる。
水越保原作、たかはしまもる作画『あるぷすひろば』(JIVE)は、「新新宿駅」の鉄道オタクの女性駅員をヒロインにしたコメディー。通勤ラッシュ解消の秘密兵器や物産展の開催など都会の駅ならではの日常を、弾ける笑いにしたてる。一方、青春(あおはる)『青春鉄道』(メディアファクトリー)は、路線乗り入れや遅延運休などの現実の事件を巡り、人間に置き換えた各路線の思惑がぶつかる異色作。東京以外の読者には意味不明な話題も多いが、鉄道の擬人化というシュールさが受けている。
鉄道マンガ人気の広がりについて、「IKKI」の江上編集長は、「環境に優しく、安価に旅を楽しめる鉄道が見直されていることも背景にある」と分析する。「鉄」の編集長にとっては、「職場で鉄道の本を堂々と読めるようになったことも喜びの一つ」とか。
(2009年10月26日 読売新聞)
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