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佐藤春夫の父、豊太郎へ 漱石の書簡発見

「扇子三本へは御所望にまかせ悪筆相認め…」 和歌山県の新宮市立記念館で来月公開

写真の拡大佐藤豊太郎にあてた夏目漱石の未公開書簡
佐藤豊太郎にあてた夏目漱石の未公開書簡
佐藤豊太郎にあてた夏目漱石の未公開書簡

 文豪、夏目漱石が、佐藤春夫の父で医師の豊太郎にあてた未公開書簡が見つかり、和歌山県の新宮市立佐藤春夫記念館が11日、発表した。春夫の無名時代に出されたとみられ、同館は「豊太郎が文化人として全国的に認められていたことがうかがえる」としている。

 同館が春夫の子孫から、書簡を張った巻物を寄託され、調査していた。漱石からのものが4通、漱石の門弟で「三四郎」のモデルとされるドイツ文学者、小宮豊隆からが1通確認され、あて先はいずれも豊太郎だった。

 小宮の書簡は「漱石全集」(岩波書店)の編集にあたり、資料の提出を受けた礼状で「書幅壱軸(しょふくいちじく)、短冊壱枚(たんざくいちまい)、書翰参通(しょかんさんつう)、扇子参本(せんすさんぼん)」を返却したことを記している。

 漱石からの4通は、全集に収録された「書翰参通」と、新たに確認された「大正5年6月27日」付の書簡。「紀伊新宮 佐藤豊太郎様」あてで、差出人は「夏目金之助」となっている。

 文面は、熊野速玉大社小史やクジラの牙(歯)などを送ってもらった礼を述べ「扇子三本へは御所望にまかせ悪筆相認め今日か明日御送付」と書かれている。

 篆刻(てんこく)家としても名高かった豊太郎が篆刻に使うクジラの歯などを送り、漱石に扇子への揮毫(きごう)を求めたと見られる。

 豊太郎と交流のあった作家の生田長江や歌人の与謝野鉄幹らを通して漱石との交際が始まったらしい。当時、春夫は「三田文学」などに執筆を始めた頃で、漱石との関係は不明だが、記念館の辻本雄一館長は「豊太郎と春夫父子は長江から『ゲーテの親子のよう』といわれたほど。文学的素養で漱石とも対等に交際していたようだ」と話している。

 同館は12月1日から開く特別展「春夫の見た永井荷風―荷風没後50年に寄せて」で、書簡を公開する。

(2009年11月12日  読売新聞)