「ハリポタみたいな作品を」
【北京=佐伯聡士】インターネット人口も3億人以上と世界最大となった中国で、ネット配信による文学作品市場が急成長している。中でも、ネット人口の中心を占める若い世代に人気の恋愛小説では、「美女作家」と呼ばれる女性作家が書き手の主役だ。業界も、文学賞主催や美女作家の顔写真付きの切手作製など積極PRを展開中で、ネット文学の影響力が増している。
北京市中心部の高層ビルにオフィスを構えるネット文学配信大手「紅袖添香」。最大手「盛大文学」傘下にあり、恋愛小説を得意とするサイトだ。卒建偉・編集長(28)は「我々の契約作家は3000人。その9割が女性です」と話す。1日当たりのアクセス数は実に3100万件に上り、固定の読者は150万人。大半が14歳〜35歳の女性だという。
中国紙によると、ネット文学市場は数年前から急成長し、小説の読者は毎日2万人ずつ増えているとされる。「盛大文学」傘下の3サイト全体のアクセス数は、毎日4億件に迫る勢いだ。昨年は、一番の売れっ子作家の収入が220万元(約2860万円)となった。
「紅袖添香」主催の今年の恋愛小説文学賞で最優秀賞を受賞した涅槃灰さんは人気美女作家の1人だ。1980年代生まれで上海在住の富裕層。スポーツカーに乗る優雅な生活をする一方で、小説を執筆する新世代のネット作家だ。わずか2年で10作品を手がけた。
現代作品から古代王朝ものまで幅広く、ファンクラブまである。すでに作品の映像化の話も持ち上がっている。涅槃灰さんは本紙の取材に対し、「ハリー・ポッターのように全世界の人々の心を奪い、各国語に翻訳されるような超大作、一つの時代を代表する作品を書いてみたい」と夢を語る。
「紅袖添香」は今回、第1弾として、涅槃灰さん以外の女性作家12人の顔写真付き切手を作製した。今後も続々、男性作家も含めて切手を作製する計画だ。
既存の書籍による文学作品が低迷するなか、「ネット文学は無視できない存在になりつつある」(中国筋)が、新興市場だけに、これまで、ポルノなどの作品も少なくなかった。共産党政権もポルノや反体制的な作品の出現を防ぐため、指導に乗り出した。今年は、党指導下にある中国作家協会がネット作家向けの研修講座を初めて開講。影響力を持ち始めたネット作家を体制内に取り込む狙いとみられる。
(2009年11月19日 読売新聞)
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