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大震災と原発事故の検証本

教訓を再出発の力に

 3・11から、まもなく1年。東日本大震災と福島第一原発事故を改めて振り返り、検証する本の出版が震災直後にも増して相次いでいる。(多葉田聡)

 未曽有の大災害の記録を読み返し、教訓を心に刻みたい。

 発生直後は見えにくかった原発事故の内実や対応の問題点が、当事者の証言から明らかになってきた。田坂広志『官邸から見た原発事故の真実』(光文社新書)は、内閣官房参与を務めた原子力工学の専門家へのインタビューをまとめた。放射性物質拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」が避難に活用されなかった原因とされる縦割り行政については「一つの部署、一人の職員としては責任を全うしている。しかし、行政全体としては極めて無責任な状態」と指摘。現場を目の当たりにしただけに実感がこもっている。

 大鹿靖明『メルトダウン』(講談社)は、菅前首相ら100人以上に取材したドキュメント。原発事故の過程が臨場感たっぷりに描かれ、事故賠償の枠組みや浜岡原発停止などをめぐる官邸と経済産業省などとの暗闘も生々しい。

 地震や津波の被災者や遺族を訪ね歩いたルポも数多い。吉田典史『震災死』(ダイヤモンド社)は検視を行った医師や消防団員、警察官も取材し、「“暴力的な死”の実態」に迫った。「ご遺体を必ずお返しする」との一心で口から泥をかき出し、身元確認をした歯科医の証言に胸がつまる。生島淳『気仙沼に消えた姉を追って』(文芸春秋)は、宮城県気仙沼市出身のノンフィクション作家が津波で行方不明になった姉を捜し歩く。震災の約2か月後に見つかった遺体がDNA鑑定でようやく姉と確認された後、著者が書き記す一文が印象深い。「遺体番号二三六は、名前を取り戻した」

 椎名篤子『がれきの中の天使たち』(集英社)は、心に傷を負った子供たちをケアする医師たちに密着。「私は死ぬの?」「お母さんはどこに行ったの?」という悲痛な叫びに言葉を失う。高田昌幸編『@Fukushima』(産学社)は福島の被災者61人のインタビュー集。福島第一原発のある大熊町で、親子二代の町長になった志賀秀朗さんは「親子で福島を潰した」と非難されたという。「『大熊は金に目がくらんだ』みたいに言う人がおるけれども、あの(貧しい)生活を抜け出すために、みんな必死で働いたんだ」。この憤りをどこにぶつければよいのか。

 悲しみや怒りの一方で、震災は人間のたくましさ、温かさを再確認するきっかけともなった。

 頓所直人『笑う、避難所』(集英社新書)は、宮城県石巻市のある避難所のルポ。行政の支援が届かない自主避難所にもかかわらず、指導力あるリーダーの下、電気工事のプロや重機オペレーター、ダンプ運転手、料理人らが力を合わせ、お年寄りや女性、子供たちと集団生活を営む。不思議と笑顔が絶えない場所になっていく姿に人と人との絆の強さを思い知る。太田圭祐『南相馬10日間の救命医療』(時事通信社)は、福島県の南相馬市立総合病院で避難直前まで奮闘した医師の手記。自らを顧みず患者を守った医師が、生まれてくるわが子に「そうま」と名付けたと知り、目頭が熱くなった。

 復旧、復興も急がれる。被災した鉄道を高台に移転するか現地で復旧させるかは難しい問題だが、原武史『震災と鉄道』(朝日新書)は新たな用地を取得するより、現地で高架化するなどした方が早期に人や物の流れが回復すると指摘する。河北新報社編集局『再び、立ち上がる!』(筑摩書房)は、震災報道で新聞協会賞を受賞した東北ブロック紙が被災地の実情や課題を丹念に取材した記事をまとめた。書名の通り、これらの本が、再び立ち上がる力になるはずだ。

2012年2月16日  読売新聞)

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