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『刑務所の経済学』 中島隆信さん

排除は得にならない

 大相撲、お寺、障害者にオバサン。経済学とは無縁に見えるテーマを経済学者の視点で分析し、有用性と改革の可能性を探ってきた。新たなテーマは刑務所。

 『障害者の経済学』を書いた時、知的障害者と高齢の受刑者が多いことを知り、「ずっと心に引っかかっていた」。しかしこの場所、やはり塀が高い。「専門家に任せておけばいいと思いがち。判決までは注目されるのに、受刑者がどう過ごし、出所した後どう生活を立て直すかにまで関心を持つ人は少ない」

 処遇や社会復帰を国民の問題として考えてもらうきっかけが「経済」だ。例えば常習犯が300円のパンを万引きして逮捕され、出所して社会に戻るまでに130万円の税金がかかるという。更生するならいいが、塀の中への逆戻りも多い。「そんな社会は効率的とは言えないでしょう」との指摘には説得力がある。

 いまの刑務所は「居場所がなく、社会から排除された人の吹きだまりになっている」と語る。

 もちろん犯罪は許せないし、被害の回復は大切だ。「でも、排除の論理は全体の得にならない。加害者も一人の人間、社会の一員であり、生産活動に加わってもらうことが大事」。隔離するだけでなく居場所、すなわち雇用の確保を手助けする必要がある。「障害者も受刑者も、日本社会を映す鏡なんです」

 障害者について調べる動機となった脳性マヒの長男は、就労継続支援を受けながら作業所で働く。「彼の居場所になっていて、喜んで通っているから、いいかな」。穏やかな父の笑顔を浮かべる。

 「景気循環もそうだが、人生もいいときもあれば悪いときもある。失敗を(ゆる)す社会、希望の持てる社会でありたい」(PHP研究所、1400円・山田恵美)

◆次回はお休みです

2011年12月20日  読売新聞)

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