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書評ほったらかしの伝統文化天然自然以上の自然美――などと形容される盆栽は、てっきり日本古来のものだと思っていたが、ベトナムにもあるらしい。その名は「ホンノンボ」。著者が指摘するように何やらのほほんとした響きなのである。本書の写真を見ると、水を張った鉢に岩(あるいは石)が置かれ、その上に五重塔や橋、釣り人などのミニチュアが配置されている。自然美というより単にいろいろ置いてみた、という風情なのである。 「仮にも一国の伝統文化が、こんなおもちゃのようなマヌケな感じでいいのか!」 著者は訝(いぶか)りつつ、そのマヌケさに魅せられて旅を始める。いわばホンノンボ紀行。まず彼はホンノンボをじっと覗(のぞ)き込む。すると自身が小さくなり、島に上陸して山道を歩くような探検気分になったらしい。そしてホンノンボ内のミニチュアになったかのようなスタンスでホンノンボ職人を訊(たず)ね歩き、その極意を探ろうとしたのである。「ホンノンボにはセンスが必要」と職人たちは口を揃(そろ)える。ではそのセンスとは? と彼が問うと「口では説明できない」「作る前に酒を飲むのがコツ」「一番大切なのは妻の協力」などと、どれも回答は要領を得ない。そこで彼はミニチュアを購入して自分でホンノンボをつくってみたり、ルーツを辿(たど)って中国、香港まで盆栽見物に出かけたりする。ところが、旅の最後にホンノンボ愛好家のおじさんからさらりとその「本質」を指摘されたそうだ。 「放ったらかしでいいのが、ホンノンボのいいところ」 ホンノンボは手入れの必要がなく、面倒くさくないから素晴らしいのだという。伝統文化は「昔からそうだったから」とのほほんと受け継がれるもの。盆栽より著者のこだわりのほうが不思議なものに見えるのもホンノンボゆえか。 ◇みやた・たまき=1964年生まれ。エッセイスト。著書に『東南アジア四次元日記』、『勝手に関西世界遺産』など。 ポプラ社 1500円 評・高橋秀実(ノンフィクション作家) (2007年5月1日 読売新聞) |
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