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書評島国の殻破った先駆者日本のことを考えるのに、日本のことだけを考えていてはだめだ。今では当たり前のことだが、かつてはそうではなかった。その「殻」を破った先駆者のひとりが、この本の著者である。 著者が学問のこころざしを学んだのは柳田國男、折口信夫。だが彼らも、日本の民俗・文化を日本という枠組みの中で見る世界観、あるいは、主に南方との交流を重視する見方しかできなかった。著者はそれが不満だったという。日本の古代史を、〈島国史観〉の枠組みから解放し、朝鮮半島との関係性において果敢に見直していく。 この「歴史書き換え」の潮流の中心に位置し、1970年代から司馬遼太郎や松本清張などと巨大な議論の渦をつくった。本書は最近書かれた論文やエッセイや講演原稿などをまとめたものだが、かつての知的興奮がそのまま再現されている。 たとえば、「帰化人」という呼称は、夷狄(いてき)が中華に帰属するという意味だから日本版中華思想が反映された言葉だとして、「渡来人」という言葉を積極的に提唱した。また桓武天皇の生母(高野新笠(たかののにいかさ))が百済系であることを書物で公に語り、右翼から抗議されもした。これらは1965年のことである。しかし2001年、日韓ワールドカップ共催の前年に天皇自らその事実に言及した。時代も変わったのである。 著者は学問研究のほかに、京大卒業後から部落問題・在日問題に実に精力的に関わってきた。〈人権文化〉に基づいて人間の幸せを構築する、という強い信念が根っこにあるのだ。 とことん批判精神のかたまりであるが、決して何らかのイデオロギーには寄り添わない。また日本文化のすべてが朝鮮からやって来たなどという荒唐無稽(むけい)な暴論も排する。すべて是々非々である。だから決して古くならない。ぴちぴちとした生命力にあふれ、いつも若々しい。これからも日本の歴史を考える際にぜひ必要な太い「軸」のひとつが、ここにあるのだ。 ◇うえだ・まさあき=1927年、兵庫県生まれ。世界人権研究センター理事長、高麗美術館館長。主著に『日本神話』。 藤原書店 2600円 評・小倉紀蔵(韓国思想研究家) (2009年11月2日 読売新聞) |
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