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書評敗戦の焼け跡でみすず書房を興した著者による、出会った人と本のメモワール。丸山眞男『戦中と戦後の間』やフランクル『夜と霧』など、数々の名著を手がけてきた歳月が、珠玉の文章で綴(つづ)られている。編集者として黒衣(くろご)役に徹する姿勢が印象的だ。 桑の葉が絹に変えられるように、ゴミが真珠になるように、本は人間を変える。それを「本の魔術」と著者は表現する。他にも心に深く刻まれる言葉が多い。著者が思いを寄せる二人の明治人――古典に学び、優れた伝記を著した山路愛山と、損得抜きで『国史大系』刊行などの大事業を成し遂げた田口卯吉。山路愛山の歴史家としての視点、田口卯吉の出版人としての覚悟から、目先にとらわれず、物事を長いスパンで考えるべきことを痛感させられた。 本は何のために書かれ、出版されるのか。その問いに答えるのみならず、読書の愉悦と驚きに満ちた一冊である。(幻戯書房、3600円) 評・黒岩比佐子(ノンフィクション作家) (2009年11月2日 読売新聞) |
書店員さんがあらゆるジャンルのお薦めの本を紹介する読書日記。
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