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書評

  • 『昨日と明日の間』

    小尾俊人
    出版社:幻戯書房
    発行:2009年10月
    ISBN:9784901998482
    価格:¥3780 (本体¥3600+税)
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 敗戦の焼け跡でみすず書房を興した著者による、出会った人と本のメモワール。丸山眞男『戦中と戦後の間』やフランクル『夜と霧』など、数々の名著を手がけてきた歳月が、珠玉の文章で綴(つづ)られている。編集者として黒衣(くろご)役に徹する姿勢が印象的だ。

 桑の葉が絹に変えられるように、ゴミが真珠になるように、本は人間を変える。それを「本の魔術」と著者は表現する。他にも心に深く刻まれる言葉が多い。著者が思いを寄せる二人の明治人――古典に学び、優れた伝記を著した山路愛山と、損得抜きで『国史大系』刊行などの大事業を成し遂げた田口卯吉。山路愛山の歴史家としての視点、田口卯吉の出版人としての覚悟から、目先にとらわれず、物事を長いスパンで考えるべきことを痛感させられた。

 本は何のために書かれ、出版されるのか。その問いに答えるのみならず、読書の愉悦と驚きに満ちた一冊である。(幻戯書房、3600円)

評・黒岩比佐子(ノンフィクション作家)

(2009年11月2日  読売新聞)