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書評
マッカーサー伝説覆す1950年6月25日、北朝鮮軍の突然の南進で始まったのが朝鮮戦争だ。3年後に休戦となり、現在に至っている。それをなぜ、今ごろ取り上げるのか。著者はこう考えたようだ。ベトナムやボスニア、イラクなど戦後、米軍が介入した数々の戦争の嚆矢(文芸春秋 各1900円)が朝鮮戦争であり、それを検証する意味は大きいと。 題名は朝鮮戦争だが、実際の主人公は、ダグラス・マッカーサーとその幕僚たちである。太平洋戦争で日本軍を打ち破り、戦後は指導者として日本に君臨した。朝鮮戦争でも当初は総司令官として国連軍を指揮したが、本著は、その伝説的な英雄としてのイメージを、ものの見事にぶち壊してみせる。言うなれば、「マッカーサー王朝」の内幕を徹底的にえぐったのがこの本の特徴だ。日本人のマッカーサー観にも大きな影響を与えるのではないか。 マッカーサーの何が問題だったのか。著者が指摘するのは、尊大なエリート意識、周囲を仲間うちで固める閉鎖的体質、露骨な権力志向と反共主義、極端な目立ちたがり屋、母親に頭が上がらないマザコン――等々である。 例えば、朝鮮戦争で中国軍の参戦はないと思いこんで米軍を北進させ過ぎ、一時は壊滅的な打撃を受けた。自信過剰に陥り、参戦を警告する確かな情報を無視し続けたためだった。 マッカーサーは、その中国に対抗するため、台湾の蒋介石軍を中国に侵攻させて第2戦線を開き、共産党支配を転覆させるべきだとする政治的な主張を繰り返した。それはトルーマン大統領の意向に真っ向から反するもので、結局、総司令官を解任され、寂しく軍歴を終える。 ベトナム戦争の報道により1964年、米ピュリツァー賞に輝いた著者は、10年かけて取材・執筆した本著のゲラに最後の手を入れた直後の2007年4月、交通事故により、73歳で他界した。ずっしりと重い上下2冊の大著は、著者の遺作となった。山田耕介、山田侑平訳。 ◇David Halberstam=作家、ジャーナリスト。著書に『ベスト&ブライテスト』『覇者の驕り』など。 文芸春秋 各1900円 評・榧野信治(本社論説副委員長) (2009年11月16日 読売新聞) |
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