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書評

  • 『喋る馬』

    バーナード・マラマッド
    出版社:スイッチ・パブリッシング
    発行:2009年10月
    ISBN:9784884182892
    価格:¥2205 (本体¥2100+税)
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 この寂しい時代、一時『蟹工船』がブームだったが、いまこそマラマッドの短編に触れて欲しい。

 彼の短編に登場する人物はなべてつましく勤勉。しかし貧しさから逃れられない。彼らには内に秘めた思いや希望がある。それを叶(かな)えようとすれば、無理も生じる。人間関係にヒビが入り、互いに疲れる。だからといって暗いままでは終わらない。

 マラマッドは登場人物たちの脇に、諺(ことわざ)通り天使を通らせる。つまり一瞬の沈黙、間を与える。ここが大人の芸。絶妙の、この小さな間はまさに天使の笑みで、光に変わり、ユーモアとなって湧(わ)きあがり、行き詰まった関係を変える。信頼や友情が蘇生(そせい)し、人々を包み込む。

 彼の短編はかつて文庫本で容易に読めた。しかし現在は絶版。本書には初訳のものもあり、柴田元幸の訳で、少し身軽で若くなった旧友に再会したような喜びを感じた。(スイッチ・パブリッシング、2100円)

評・松山巖(評論家・作家)

(2009年11月16日  読売新聞)