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書評この寂しい時代、一時『蟹工船』がブームだったが、いまこそマラマッドの短編に触れて欲しい。 彼の短編に登場する人物はなべてつましく勤勉。しかし貧しさから逃れられない。彼らには内に秘めた思いや希望がある。それを叶(かな)えようとすれば、無理も生じる。人間関係にヒビが入り、互いに疲れる。だからといって暗いままでは終わらない。 マラマッドは登場人物たちの脇に、諺(ことわざ)通り天使を通らせる。つまり一瞬の沈黙、間を与える。ここが大人の芸。絶妙の、この小さな間はまさに天使の笑みで、光に変わり、ユーモアとなって湧(わ)きあがり、行き詰まった関係を変える。信頼や友情が蘇生(そせい)し、人々を包み込む。 彼の短編はかつて文庫本で容易に読めた。しかし現在は絶版。本書には初訳のものもあり、柴田元幸の訳で、少し身軽で若くなった旧友に再会したような喜びを感じた。(スイッチ・パブリッシング、2100円) 評・松山巖(評論家・作家) (2009年11月16日 読売新聞) |
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