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    榎あづさ主演「黒薔薇少女地獄」の通し稽古を見た

    • 榎さんと太田さん
      榎さんと太田さん

     舞台のテーマを聞いたら「皇室典範改正です」との答えが返ってきて、一瞬、難しいところに来てしまったのかと、ドキドキした。先日、「歌祭」に出演してくれた歌手で声優の榎あづささんが、舞台「黒薔薇少女地獄 第五回公演 『亡国ニ祈ル天ハ、アラセラレルカ』」(脚本、演出・太田守信)に主演するとのことで、「ぜひ、稽古を見に来てください」と、あのかわいい声で誘われたのだ。

     都内某所の地下の稽古場に足を踏み入れたものの、テーマはソレだし、コワイ漢字ばかりが並ぶタイトルだし、私を安心させてくれる要素は一つもない。ポーカーフェースを気取ってはいたが、内心脅えながら通し稽古の開始を待った。

     不安は主に二つあった。この欄でさらりと取り上げるのには厳しい、すごくイデオロギー的な芝居だったらどうしようか、というもの。そういえば、まだ私が女子大生だった昭和の時代、今では某社で偉くなっている演劇好きの某氏に連れられ、大学の構内のテント小屋で、いきなり国旗を燃やすアングラ芝居を見たよなあ、なんてことを脈絡もなく思い出す。もう一つの不安は、イデオロギー先行の芝居によくある、「言いたいこと」ばかりが前面に出て来て、面白くない芝居だったらどう2時間を耐え抜こうか、というものだった。

    • 稽古前に談笑する2人
      稽古前に談笑する2人

     結果から言うと、丸イスに座っての2時間が、あっという間! いやはや、実に面白かった。

     あづさちゃんの役は、近未来の某国の、「最後の内親王」。彼女と、彼女のご学友で今は皇室番記者の女性(ダブル主演のさかいかなさん)の2人を軸に、内親王が結婚を決めて、結婚式を迎えて皇籍を離脱するまでが描かれる。その状況を政治的に利用しようとする女性政治家や、三島由紀夫を彷彿(ほうふつ)とさせる作家、次第に先鋭化してしまう学生運動に身を投じる女子大生などが現れる中、物語は夢と現実を行き来し、心を揺さぶってくる。確かに、テーマは皇室典範改正かもしれないが、登場人物の言葉を借りるなら、「リアリティーあるファンタジー」であって、主義主張を押しつけてくる芝居とは一線を画している。

     何より、あづさちゃんの芝居が、とてもよかった。高貴な人のもつ独特の悲しみと優しさを醸し出しており、見ていて包み込まれる。それが、さかいさんの抱える現実的な鋭ささえある悲しみと対をなし、舞台に陰影を刻む。

    • 「ぜひ見に来てください」と語る榎さん
      「ぜひ見に来てください」と語る榎さん

     若い女性が14人も出演している芝居で、華やかでもある。その若い14人全員の声がとても魅力的なのも、この芝居を成立させているポイントだろう。難しい言葉が多いこともあり、きちんと台詞(せりふ)を話せる女優さんを選んだそうだ。台詞を聞いていて、心地よかった。お話の展開(てんかい)といい、台詞運びといい、映像とは全く違う、舞台らしい舞台であり、ひととき地上の喧騒も、そこが殺風景な稽古場であることも忘れて、物語に没入した。

     蛇足かもしれないが、そのうえ、まさか、まさかの、このストーリーに「特撮」が絡んでくるというビックリな展開まであった(笑)。そのくだりとか、アイドル握手会のリアルな描写とか、ニヤリと笑わせてくれる。

     あづさちゃんは「ファンタジーな舞台なので、全てを忘れて見ていただいて、それぞれの人にとって、一番大事な物を見つけてもらえたら」と話している。公演は、23日から、東京・新宿のSPACE 雑遊で。詳しくはホームページ。このページの太田さんの写真がまたちょっとコワイです…(笑)。

    2017年09月22日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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