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「寄り添い、よく知ることでしか伝えることはできない」フォトジャーナリスト 高橋智史さん 29 (秋田市)有毒なガスが噴出するゴミ山から鉄くずを集めて売り、生計を立てる少年。薬物依存リハビリセンターで、苦しみながら更生の道を歩む若い入所者。1980年代の内戦で負傷した元兵士。一獲千金を狙いキックボクシングの練習に励む若者。 カンボジアで生活した3年10か月に撮影した珠玉の40枚を並べた写真展「素顔のカンボジア」が22日から、秋田市のココラボラトリーで始まる。 「服もボロボロで体も汚れていた。ゴミ山の少年は厳しい環境で暮らすが、必ずしも不幸ではない。貧しさや厳しい環境をただ伝えるつもりはない。写真から色々なことを感じ取ってほしい」 秋田市出身。高校時代、ドキュメンタリーが好きで、将来は漠然と報道に携わる仕事がしたいと考えていた。卒業後、国際ボランティアを養成する東京の専門学校に入り、在学中から様々なNGO活動に参加。国際協力の現場に魅力を感じたが、この先、続けることに迷いがあった。 転機が訪れたのは2年生の9月。野生動物の密猟対策に取り組むNGOに同行、ロシアでアムールトラの環境保全活動に参加した。先住民族が「アンバ(森の神様)」と呼ぶ野生動物の迫力に鳥肌が立った。と同時に、森林伐採による生息地の減少や密猟など厳しい現実を目の当たりにした。 「現場に来ても何もできないのか」。打ちひしがれていると、同行した女性カメラマンが、伐採した木を運ぶトラックにカメラを向けた。人々に現実を伝えるためにシャッターを切る姿に、震えが止まらなかった。 「一枚の写真には見た人に考えさせる、映像にはない力がある。自分も写真で社会問題を伝えたい」。帰国する飛行機の中で、進路を決め、日本大学芸術学部写真学科に入学した。 卒業直後の2007年4月、最初の仕事の舞台に選んだのは、学生時代から度々訪れたカンボジアだった。貧困、人身売買、エイズなど困難な問題を抱える国で、生きることの本質を見極めたいと思ったからだ。 薬物売買の現場で張り込んだり、ポル・ポト派の元兵士に話を聞いて回った。トンレサップ湖の水上集落に住み込み、戸籍を持たない漁民の生活を記録した。 滞在中に確信したのは、「寄り添い、よく知ることでしか『伝える』ことはできない」ということだ。 帰国した今、活動予定は何も決めていない。しばらく地元で考えるつもりだ。日本ではフリーで食べていくことは難しいが、広告写真を撮るようなタイプのカメラマンではないと自覚している。だからこそ、今後も人々に寄り添い、自分にしかできない報道写真を撮っていこうと思う。 (西田道成) (2011年2月21日 読売新聞)
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