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「人の群れ」再来待つ

「津軽海峡・冬景色」石川さゆり

上野発の夜行列車「あけぼの」。「人の群れ」が降り立った青森駅のホームはかつてのままだ

 4月27日午前9時56分、青森駅の5番線。いつものように寝台特急「あけぼの」が車輪をきしませ、ゆっくりと入ってきた。定員約220人の列車から降りてきたのはこの日、わずか20人ほど。改札口につながる階段をぱらぱらと上っていった。

 「夜行の乗客はうんと減ったね。ゆったりできていいんだけど……」。和歌山から東京で乗り継ぎホームに降り立った男性(69)は、先行く客の後ろ姿をさみしげに見つめた。

 石川さゆりさんの代表曲「津軽海峡・冬景色」。その舞台となった青森駅に、歌われた「人の群れ」は、いまはない。

 ―北へ帰る人の群れは 誰も無口で 海鳴りだけを きいている

 「列車が到着すると、乗客が我先にと青函連絡船の桟橋に押しよせてきたもんです」。まだ連絡船が運航していた1980年代の後半、青森駅の助役だった南部敬司さん(58)は、往時の混雑ぶりを懐かしむ。

 曲がヒットした77年当時、青森駅には上野発の夜行列車が1日約10本滑り込み、ホームや駅前はごった返した。しかし88年、青函トンネルの開通で連絡船が廃止されると、夜行列車も減った。現在は「あけぼの」1本を残すのみだ。

 駅周辺ではいま、東北新幹線新青森駅の乗降客を呼び込もうと、県産リンゴやねぶたをテーマにした観光施設の建設が進んでいる。

 「新駅開業を起爆剤に、青森駅前もにぎわいを取り戻してほしい」。南部さんは、活気が再び到来することを願ってやまない。

 多くの人の、様々な夢と思いを乗せた新幹線は、あと7か月で全線が開通する。

 (文・野口晴人、写真・三上津与美)

(おわり)

◇ 昭和を代表する演歌の名曲で、ミリオンセラーを記録。ヒットした1977年には数々の音楽賞に輝き、石川さんは同年の紅白歌合戦に初出場を果たした。88年、最後の青函連絡船が青森港を出航した時の記念イベントでは、連絡船をひと目見ようと桟橋に集まった人たちから、この歌の大合唱が巻き起こった。

2010年5月8日  読売新聞)
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