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地域の個性生かそう「地産地消」自立のサイクル鴨川市の多目的農園「鴨川自然王国」理事で、歌手の加藤登紀子さん(64)に、食の原点を実感できる「地産地消」の取り組みや、地域から生活スタイルを変えることの大切さなどを語ってもらった。加藤さんは国連環境計画(UNEP)の親善大使としても活動し、アジアなどの農業や環境問題への関心も高い。 ■2000年に国連環境計画の親善大使に就任。アジア各国を回り、農業が経済発展の犠牲になっていること、環境が危機的な状況にあることを知った。 「バンコクでは、住民の5分の1がスラムに住んでいます。元は農民だった人も多い。土地が都市化され、タイでは数十年の間に50%の森林がなくなったと聞きました。日本に輸出したことも理由の一つです。一方、日本では、海外の森を切る代わりに、森が手つかずのまま残され、荒れている。日本が変わることが大切だと痛感しています」 ■歌手活動の一方、月4〜5日は、夫の藤本敏夫さん(2002年死去)が設立した「鴨川自然王国」に滞在する。最近、農業を体験・学習する「里山帰農塾」には20〜30歳代の参加者が増え、近辺には仕事を辞めて都会から移住する人が増えているという。 「かつて私たちは、労働がものを作る喜びにつながらず、むしろ人間性を疎外すること、生活が複雑になり、衣食住が計り知れない大きな力に振り回されることに危機感を持っていた。今、『幸せってなんだろう』と不安になってしまう時代、鴨川に移り住んだ人たちを見ていると、自分の手でものを作ることの喜びはこんなに大きいのかと感じる。未来を語れる場所だなあという感じがしている」 ■自然王国では、水は裏山のわき水から引いている。電気は一部が太陽光発電。今後は自然エネルギーでまかなっていく方針だ。米と野菜は完全自給、みそも仕込んでいる。食の危機、エネルギーの危機が叫ばれる中、どちらも「地産地消」する必要性を訴える。 「鴨川のように地域で食が生産されている町でも、外から入って来るものの方が多い。(近海の)アジより(輸入の)サケを食べ、農家でさえスーパーで野菜を買う。もったいないと思う。私の夢は、いろいろな地域が小さなサイクルの中で自立すること。本当の地産地消、近くの水、近くの電気……。エネルギー問題も地域で解決できることがいっぱいあるはず」 ■地球温暖化対策としてCO2(二酸化炭素)の削減が関心事となったが、CO2ばかりがクローズアップされることを危惧(きぐ)する。 「CO2は地球温暖化・環境悪化の一つの要素。それがすべてではないと思わなければ。石油、それに代わるバイオエタノールも、エネルギーを追求する限りどこかに負荷がかかる。そうしないために、少しエネルギーが手に入らなくても暮らせるようにしたい」 ■以前から新聞記事の切り抜きをしている。今年は「環境」のファイルに入れる記事が圧倒的に多かった。勇気づけられると同時に、一過性のブームとして終わらせないよう、「なんでもいいから一つ始めてみよう」と呼びかける。 「『のど元過ぎれば……』という不安もあります。行動を開始することで、ただ通り過ぎるブームではなく、スタートラインに立てる。国頼みはやめて、それぞれの地域で自分たちの個性的なやり方で、地域を変えていこうという動きも大きくなってきた。この流れを大切にしたいと思う」 (おわり) (この連載は田中誠が担当しました) (2008年10月20日 読売新聞)
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