![]() ![]() ![]() 波紋狂牛病 (1)「感染ない」前提に検査(2001/9/22) 危機意識の欠如、指摘も 先月六日、県内の食肉処理場。県の食肉衛生検査所から派遣されている獣医師は、白井市の酪農家から運び込まれた乳牛(メス、五歳)を診察、「起立不能で敗血症。狂牛病(牛海綿状脳症)の疑いはない」と診断した。にもかかわらず、この牛の脳の一部である延髄を狂牛病検査のために動物衛生研究所(茨城県つくば市)へ送ったのは、「農水省のサーベイランス(監視)事業に協力するために過ぎなかった」(県衛生指導課)からだという。 農水省は今年四月、日本の牛の安全性を国際的にアピールすることを目的に、狂牛病の監視体制を強化。検査データを蓄積するため、年間三百頭を目標に都道府県に検査材料の延髄を送るよう要請した。だが、同月中に集まった検査材料は一ケタに過ぎず、同省は翌五月、改めて都道府県に協力を要請した。これを受けて県は、「狂牛病の疑いがない場合でも、検査の対象になる」と関係者に伝え、協力を求めていた。 そもそも問題の牛には「獣医師の診断では狂牛病の疑いがなかった」(県衛生指導課)こともあり、牛の症状について、県東部家畜保健衛生所(東金市)が同省に報告した書類には、症状を記入する欄に印をせず、何の説明も加えなかった。同省はこの点を問題視しているが、県衛生指導課は「該当する項目がなかったため、印を付けることができなかったに過ぎない」と反論。「国の検査は、国内には狂牛病の感染はあり得ないことを前提にしているものだ」と述べ、検査のあり方に批判の矛先を向けている。 責任の押しつけ合いとも言えるが、たとえ防疫事業は国の所管とはいえ、県も狂牛病発見に消極的だったことは否めない。 感染があり得ないことを前提にした検査のあり方は、さらなる問題を引き起こす結果となった。問題の牛は焼却処分されず、頭部以外が茨城県内の飼料原料製造工場で豚、鶏用の飼料として加工された。同省は、延髄を送ることを要請しながら、検査結果が明らかになるまで、残った牛の処置について何も指示していなかったためだ。 「食肉不適」と診断された牛は通常、遺体を有効利用することもあり、その日のうちにも飼料の原料製造工場に送られ、すぐに加工されるケースが多い。 家畜伝染病予防法では、狂牛病や牛疫、口蹄(こうてい)疫などに感染している牛の遺体を焼却するよう義務付けているが、今回のケースのように精密検査の結果が判明するのに一か月以上かかれば、感染していることがわかった時点では、遺体は飼料となっていることになる。 このため厚生労働省は十九日、監視体制を欧州レベルに強化し、食肉処理場で処理される牛のうち、生後三十か月以上のすべてを対象に、感染の有無を検査することを決めた。さらに、検査結果が出るまで遺体の持ち出しを禁止した。県は他の都道府県に先駆けて、この検査を実施する方針だ。 狂牛病問題に詳しい山内一也・東大名誉教授は「国内の牛にも、狂牛病の感染の可能性が指摘されていながら、これまでの検査はあまりにお粗末だった」と述べ、国、県の危機意識の欠如を指摘している。
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