![]() ![]() ![]() 波紋狂牛病 (3)酪農家に追い打ち(2001 9/26)
ふん尿、高齢化問題抱え 夜も明け切っていない午前五時、鴨川市横尾で酪農を営む糟谷英文さん(34)は、早朝の冷気が漂う牛舎に向かう。糟谷さんはまず、牛舎にズラリとつながれた約七十頭の乳牛のふん尿処理に取りかかる。午前中はエサを与えるほか、約五時間かけて搾乳、飼料作り、牛のブラッシングなどを黙々とこなしていく。昼は、ふん尿でたい肥を作ったり、牛舎に敷くワラを集める。さらに夕方から、午前中と同じ作業を繰り返し、午後九時ごろになって、ようやくすべての作業を終える。相手は生き物だから、一年三百六十五日、早朝からの作業は休日なしだ。 「いかに健康な牛から乳を搾れるかが勝負だ」。牛は、生まれてから乳が搾れるようになるまで約二年間かかり、農作物に比べると作業のサイクルが長い。その二年間に何の病気も患わない丈夫な牛を育て上げることが最も重要なポイントだ。「時間がかかる分、成功した時の喜びは大きい」と仕事のやりがいを語るが、その一方で、酪農家の頭を悩ませる問題は決して少なくないという。 糟谷さんは、最も解決が難しい問題としてふん尿処理を挙げる。農水省は一九九九年、ふん尿の野積みや素掘り処理を禁止し、代替策として、ふん尿をたい肥化する機械のリース事業を始めた。 糟谷さんは昨年、一千万円でこの機械を借りて、たい肥化のための施設を造った。だが、「ハードウエアが整備されても、たい肥を売る先がない」という。牛一頭あたりのふんは一日約四十キロ。七十頭分だと二トントラック二台分にもなる。もともと金にならない“廃棄物”をどう収入につなげるか。「行政や農協などが協力して、販売のネットワークを整備するしかない」と糟谷さんは話す。 高齢化問題も深刻だ。糟谷さんはまだ三十代だが、農協などの集まりで同世代の酪農家を見ることは少ない。「二十代や三十代の酪農家は、全体の5%ぐらい。酪農発祥の地とされる南房総だが、衰退しているのは間違いない」と指摘し、糟谷さんの表情が曇る。 こうした中、さらに追い打ちをかけたのが、今回の狂牛病問題だ。狂牛病の牛が白井市で発見されてから約二週間。これまで、問題の牛の処理をめぐって二転三転した国や県の説明について、糟谷さんは「情報公開がいい加減だ。正しい情報が伝わらなければ、消費者の不安が広がってしまう」と不満を漏らす。 その不満が的中したかのように、学校給食で牛肉の使用を見合わせるケースが全国の自治体で後を絶たない。減収などの影響はまだ出ていないという糟谷さんだが、「もし風評被害が拡大したら……」との不安は隠せない。 酪農への逆風は日増しに強くなる一方だが、糟谷さんは「おいしい牛乳を期待して、飲んでくれる人がいる限り、それにこたえなければ」と力を込める。
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