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どぶろく「なっそ」 岩松町並み保存会(宇和島市津島町) 活性化託す試練の味白く濁った酒の表面に無数の米粒が顔を出し、時折ポコポコと泡がはじける。500ミリ・リットルだが、瓶は一回り大きい。「どぶろくは瓶詰めした後も発酵が進んでガスを出すので余裕を持たせとんですよ」。兵頭肇さん(52)に促されて口に含むと、炭酸飲料のようにピリッとした感触が舌に心地よい。見た目とは違ってキリッと澄んだ辛口だ。 昭和初期の酒蔵や旅館が軒を連ね、獅子文六が小説「てんやわんや」で「銀の鱗(うろこ)を並べたよう」とたたえた宇和島市津島町の岩松地区。兵頭さんは住民有志8人で作る「岩松町並み保存会」の代表だ。地区の活性化策を話し合う中、どぶろく造りを決めたのは、素朴さや懐かしさが町の雰囲気にぴったりだから。「酒好きの仲間が一杯やりながら出したアイデア」と、メンバーで市職員の森田浩二さん(42)は笑うが、完成した昨秋以降、地元のイベントで売り切れが続出。仕込みは既に8回を数え、半年間で3500本を売り上げる人気商品に育った。 どぶろくの製造免許は年間6キロ・リットル以上製造しないと取得できないが、国の構造改革特区「どぶろく特区」に認められれば原料米の自己栽培を条件に少量でも醸造できる。同会は昨年3月、県内初の認定を受けた。 「でも、実際に酒造りにこぎ着けるまではまさに『てんやわんや』でした」と森田さんは振り返る。認定後、免許取得手続きを進めるとともに、“見切り発車”で約50アールの棚田でコシヒカリの栽培を開始。メンバーの内山陽都さん(54)のしょうゆ店に貯蔵タンクやアルコール計測機器を運び込み、麹(こうじ)室も新設した。酒造免許が届いたのは、米を収穫して1か月後、10月上旬のことだった。 酒造りの工程にはこだわり抜いた。雑味を除くため、1・8トンの米を清酒用に匹敵する70%まで精米。酒の味を決める米麹は京都の専門店から取り寄せた麹菌で手作りした。繊細な温度管理が必要なため、11月中旬の販売開始が迫る中、夜通し温度計に目を凝らす日々が続いた。 辛口で洗練された味は「清酒に引けを取らない」と玄人受けが良い一方、「どぶろくらしくない」との声も聞こえてくる。しかし、兵頭さんは「精いっぱい丁寧に造った味。岩松の個性として通してみたい」と話す。 今月の仕込みで、1年目に準備した米を使い切った。6月には、コシヒカリに替えて県産品種の米の田植えが始まる。「仕込むたびに、前よりもさらにおいしいどぶろくを造りたい」と内山さん。凝り性の面々の顔を思い浮かべながら飲むどぶろくの味は、ちょっと癖になりそうだ。(澤本浩二) <買うなら> 500ミリ・リットル入り1200円。岩松地区の内山商店(0895・32・2119)と小野商店(0895・32・2608)で販売。仕込みの様子などはブログ「津島郷、岩松のどぶろく『なっそ』」(http://nasso.exblog.jp/)で紹介している。 (2008年5月26日 読売新聞)
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