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還暦の名将新天地熱<1>

強力打線つくり上げる 藤田平監督に聞く

 福井のスポーツ界にとって記念すべき年が始まった。プロ野球独立リーグのベースボール・チャレンジ(BC)リーグに、県内初のプロスポーツチーム「福井ミラクルエレファンツ」が今季から参戦する。監督、スタッフ、選手の陣容はほぼ決まり、4月19日のリーグ開幕へ向けて、体制は着々と整いつつある。力強く歩み出した“象軍団”の挑戦。まずは、日本球界を代表する男の、還暦を機に新天地へかける思いに耳を傾けよう。

 「あれほど有名な野球人が、出来たばかりの福井の球団に来てくれるなんて」――。昨年11月8日、県民プロ野球球団設立準備室が発表した監督名は、県民に大きな驚きと期待をもたらした。阪神で遊撃手として19年間プレーし、現役通算2064安打を記録した名選手で、同球団の監督も務めた藤田平。四国・九州アイランドリーグも含めて、独立プロ野球リーグでは初めての〈名球会会員監督〉だ。

 県民球団の指揮官選びが難航していた昨年10月29日、同準備室代表の清水昌勝らは、兵庫県西宮市内の藤田の自宅を訪問した。BCリーグの掲げる「地域貢献」という理念を熱っぽく語る清水の姿に打たれ、藤田は監督の仕事を引き受けることを決心したという。

 最初にお話をうかがった時は、別の人を紹介すればいいのかと思っていた。まさか自分が――という気持ちはあったが、妻からも「やってみたら」と言われた。福井は、私の現役時代から阪神ファンの多い土地柄だし、知人も多い。阪神の監督を務めていたころから10年たち、もう一度現場へ戻りたいという思いもあった。だから、要請があったその日のうちに決めてしまった。タイミングが良かったんだ。

 BCリーグは、地域活性化への貢献だけでなく、「野球界の底辺拡大」や「日本プロ野球組織(NPB)へ若手選手を送り出す」といった様々な使命を掲げている。プロ野球組織とはいえ、慣れ親しんだNPBとはまったく異なる世界へ飛び込むことになる。

 自分は野球しかやってきていない人間。他の仕事をする訳ではない。選手らの指導に不安はない。

 独立リーグが生まれた背景には、社会人野球からの企業の撤退など、アマチュア野球の衰退がある。野球を志す若者はたくさんいるのに、NPB以外にはほとんどチャンスの場がなくなってしまった。これは環境整備をしてこなかった球界の責任。私を含め、先人たちが、独立リーグのような場をもっと早くつくるべきだった。だから、この機会に手助けしたい。NPBで恩恵を受けた人間の一人として、恩返しをしていかないと。

 過去3年間、独立リーグからは育成枠も含めて12人の選手がNPBの扉をたたいた。藤田のもとにも、大いなる夢を追い求める若者たちが集う。先達として、彼らに伝えるべきことは多い。

 ひと言では言い切れないが、「プロの世界はそう甘くはないぞ」と選手に伝えたい。常に精進していないと、結果は出ない。NPBを目指すなら、そのスカウトの目に留まるほど高い水準まで成長しなければならない。

 ただし、野球を楽しむことも忘れないでほしい。現役時代に足の治療で渡米した時、向こうの選手は激しい競争の中にあっても、楽しみながらプレーしていた。そんな米国で目の当たりにした野球が理想です。

 開幕まであと約3か月。発足間もないチームに残された時間は決して多くない。2月1日にはキャンプインし、本格的なチームづくりを始める。

 現代野球では、走塁が試合を左右する重要な要素となる。足に好不調はないので、まずは足を使った野球を、チームづくりの中心に据える。打撃は私の専門であり、(主に同じディビジョンで戦う)石川、富山に引けをとらない打線をつくり上げたい。両チームとも非常に強いと聞いているが、胸を借りるつもりで挑んでいきます。

(文中敬称略)

2008年1月1日  読売新聞)
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