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底辺拡大地道に<5>

野球少年たちにサインをねだられる慶家捕手(左)。今年は県内各地でこうした光景が見かけられるだろう(2007年12月23日、越前市西尾町の万葉中で)

 越前市立万葉中グラウンドで、ユニホーム姿の野球少年たちの輪ができ、笑い声が響く。中心には福井ミラクルエレファンツ捕手、慶家誠太朗の姿があった。列を作ってサインをねだる少年たちに、慶家は一人ひとり声をかけながら丁寧にサインに応じた。

 慶家は2007年12月23日、同市スポーツ少年団が主催する野球教室に参加し、キャッチボールや走塁などの基本練習を中心に熱心に指導した。少年たちが自分へ向けるきらきらとしたまなざし。慶家にも、同様にプロ野球選手にあこがれた時期があった。

 「子どもたちに教えることで自分も勉強になる。今後も野球教室に積極的に参加し、地域に愛される選手になりたい」

 近年はサッカーやゴルフなど、日本選手が世界的に活躍する様々なスポーツが、野球以外にも台頭している。〈野球界の底辺拡大〉は、プロ野球独立リーグに課せられた大きな使命であり、様々な取り組みが進んでいる。

 独立リーグの先輩格、九州・四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズでは、所属選手が、高松市内の小学生の登下校に付き添う「スクールガード活動」をボランティアで行っている。同市教委側も選手の頑張りに応えようと、市内の全小中学生に無料チケットを配布。野球に縁のなかった子どもも球場へ足を運ぶようになった。

 一緒に登下校している選手の好プレーに手をたたいて大喜びする子どもたち。外野の芝生席では、家族連れがレジャーシートを広げて弁当をほおばる姿が定番となった。

 香川の球団社長を務める小崎貴紀は「明るい空の下に5000人も6000人も集まるイベントは、これまで香川にはなかった。家族4人で遊園地に行くよりも安く済み、コストパフォーマンスのいい娯楽だということに気付いてもらえた」と手応えを口にする。

 球場に通うことの楽しさを知った子どもが、新たに野球を始め、プロ野球選手を目指すようになる――。小崎は、そんな波及効果を思い描く。球団の収益も、3年目でようやく赤字を脱することができた。

 エレファンツが所属するBCリーグは、地域貢献の一環として野球教室の開催や講演活動などを奨励している。エレファンツも今春から県内各地で少年野球教室を積極的に開く方針だ。

 一方、少年たちへの野球指導のあり方も広がりを見せている。

 エレファンツの外野手、金輪圭祐が所属する高松市内のクラブチーム「アークバリアドリームクラブ」は、学習塾と同様の月謝制で小中学生を指導する珍しい「野球塾」を05年4月から開設している。最大で1日2時間、週4回の指導で、月謝は2万4000円。

 放課後になると、それぞれに部活や所属チームでの練習を終えた子どもたちが、保護者の送迎でクラブの室内練習場に集まってくる。現在、約80人が通っているという。

 福井行きが決まった後、「短期間でも恩返しを」と子どもたちへの指導を始めた金輪は「野球を教わった人が独立リーグなどで頑張っているんだと、子どもたちに思ってもらえたら最高」と話す。

 07年度の県内スポーツ少年団の登録状況(県体育協会まとめ)によると、地域のスポーツ少年団は540団体あり、1万3435人が所属している。団体数は軟式野球が11年連続でトップとなっており、113団体2670人と全体の20%近くを占めている。少子化の中にあっても、県内では野球人気が根強いことをうかがわせる。

 子どもたちに夢を抱かせる存在となり、野球少年をさらに増やせるか。エレファンツの今後の取り組みにかかっている。

(文中敬称略)

2008年1月8日  読売新聞)
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