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(3)日陰で干し、長持ち

「鮮魚」を加工

写真:写真説明
こつは、大型扇風機での陰干し。魚本来の風味を壊さないための智恵だ
いわき市の江名漁港から三百メートルほど離れた加工場で、一風変わった干物が作られている。

 朝、市場で仕入れた新鮮な魚を開き、塩味を付ける。サバ、タラ、カレイなどを工場内の棚に並べ、漁船のスクリューを改造した扇風機の風で、二昼夜乾かすと出来上がりだ。海辺の集落でごく普通に見られる「天日干し」の風景は、ここにはない。加工場「丸源水産食品」の佐藤勝彦社長は「冷凍庫で保存すれば、三か月はおいしく食べられる」と話す。週末には、埼玉県など、首都圏からも常連客が訪れて買い求めていくという。

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 もともとは、揚げカマボコの加工が本業の同社。干物の製造を始めたのは、原料を仕入れていた市場で、佐藤社長が毎日目にしていた光景がきっかけだった。

 定置網漁には、大小様々な魚がかかるが、競りにかけられる大型の魚に対し、時期外れだったり、形が小さかったりする「雑魚」は、隅の方に集められる。値段は、一キロ10―20円程度。使い道は、肥料や動物の餌と決まっていた。

 「雑魚も競りにかけられる魚も、味は変わらないはず」と考えた佐藤社長。すぐに、干物に加工することを思いついた。だが、太陽に一日あてて作る通常の「天日干し」では、表面に浮き出る魚の脂肪分が、強い紫外線にさらされ、すぐに黄色く変色。元々、見栄えの良くない雑魚にとっては大きな弱点となる。勢い込んだはいいものの、「これでは、売り物にならない」と頭を抱えていた。

 そんなある日、一部に変色していない魚があることに気がついた。たまたま、日陰になっていた部分で干した魚だった。「これだ」。最初から日にあてなければ、変色することもない。扇風機で乾かしてみると、うまくいった。製品化にこぎつけた時には、いつしか一年が過ぎていた。

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 「縄文干し」の名は、同港近くで縄文時代の釣り針などが出土していたことにあやかった。「昔から浜の人間は魚を食べてきた。ロマンがあっぺよ」と佐藤社長。頭からバリバリと食べるイメージが「縄文人」に重なったという。

 だが、同業者の評判は散々だった。「雑魚の干物なんか、売れるはずがない」。時はバブルの全盛期。「あそこの社長はまた外車を買ったらしい」「社員旅行は海外に行くらしい」――。見回せば景気のいい話ばかりの中、中古車で必死に各地の物産展を回って売り歩いた。

 「うまみが違う」「長持ちする」。客の反応を見て自信を深め、口コミで常連客も増えた。県や水産庁の賞を受賞したことでハクもつき、冷笑していた同業者の間からは、「弥生干し」なる類似品まで現れた。

 当初は、「片手間」でやっていた縄文干しだったが、売り上げは順調に伸び、今では主力だった揚げカマボコに肩をならべるまでに。先の見えない不況の中、会社の業績も、縄文干しに支えられ堅調だ。

 長期的な不漁による水揚げの減少など、同市の漁業は低迷が続いている。江名漁港の漁獲量も激減した。それでも、「少しでも多くの人に、おいしい魚を食べてもらいたい」と佐藤社長。あえて“日陰”を選んだ干物には、魚と同じ海で育った職人の誇りが込められている。

       

 〈メモ〉縄文干し

 「雑魚」と呼ばれる魚を選び、薄い食塩水に丸一日つけ込んであく抜きした後に、扇風機にあてながら陰干しして乾かす。直射日光による酸化がないため、酸化防止剤や防腐剤などの薬剤は使わない。近火の弱火でじっくり焼くと、魚本来のうまみが引き立つという。季節のものを選んでいるので、「種類はおまかせ」という。注文は丸源水産食品(0246・55・7313)まで。

   

 

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