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(4)荒れた桑園、食べて再生砕いた粉をパン、菓子に
県内における二〇〇〇年現在の耕作放棄地は、一万五千六百五十一ヘクタールで、全国一位。放棄地が農地全体に占める割合も、10・5%で、同六位となっている。このうち、大きな割合を占めると見られているのが桑畑。かつて本県の主産業として知られた養蚕では、「神様」と尊ばれた蚕のエサとして、競って栽培された桑だったが、その蚕が飼われなくなるにつれて重荷になりつつあるのだ。 ◇ 桑の有効利用策として注目されているのが、食品への加工。「蚕が食べていいものなら、人間が食べてもいいはず」――。という発想だ。 保原町上保原のカフェ「マルベリー」では、桑の葉を使ったアイスクリーム、クッキー、お茶などが楽しめる。英語で「桑」を表す店名の通り、店内は桑一色だ。 「『実は食べたことあるけど、葉っぱなんか食べられるの?』って、よく聞かれるんですよ」と経営者の赤間真理子さん(57)。元々、東京で編集プロダクションを経営していたが、一九九八年に、たまたま桑の実を使ったジャムを口にしたことをきっかけに、桑を使った食品の販売にかかわるようになった。酸味の中にほのかに混じる甘味。どこか懐かしい味に病みつきになった。 売れ筋は、桑の葉を乾燥させて細かく砕いて作ったパウダー(粉)。深緑色の外見に似合わず野菜臭さがほとんどない上、手軽に食物繊維を摂取するのに適していることから、水や湯に溶かして飲んだり、様々な食品に混ぜたりする。遠方から訪れてまとめ買いしていく客も多いという。 パウダーを生産しているのは、阿武隈山系に位置する東和町。かつては町を支える主産業だった養蚕が、一九八〇年代以降、中国産生糸の流入で、壊滅的な打撃を受けた。 「子供の学校は、お蚕様に出してもらった」とまでいわれたマユ。だが、その価格は採算ラインの一キロ2000円を下回る1200―1300円台に暴落。町全体で八三年に10億円に上った養蚕の生産額は、二〇〇〇年には2000万円にまで落ち込んだ。養蚕が衰退すれば、当然、蚕のエサである桑の葉の需要が減る。栽培は、激減の一途をたどった。 ◇ 「福島市や伊達郡の平野部は、うまくモモやナシなどの果樹に移行できたが、山がちの安達郡ではそうはいかない」と、同町の農業・菅野正寿さん(46)。八五年に九百ヘクタールに及んだ桑園の面積は、二〇〇〇年には、わずか四十ヘクタールにまで落ち込んだ。農家の高齢化もあって、転作は思うように進まず、遊休桑園は、六百ヘクタールにのぼった。 「このままでは、町の農業が死んでしまう。何とか有効活用できないものか」。農家の悩みを解決してくれたのが、食品への加工だった。桑の葉を蒸した後に乾燥させ、砕いて粉にする。町内の加工施設には、川俣町からも桑の葉が持ち込まれるようになった。 粉は、パンや菓子などに混ぜられ、隣にある「道の駅」の店頭に並ぶ。今夏には、粉を混ぜた焼酎も登場し、すぐに完売するなど、すっかり町の新名物として定着した。「お蚕様々ならぬ、桑の葉様々です」と菅野さん。“神様”の食べ物だった桑畑が今、新たな用途を得て生まれ変わろうとしている。
〈メモ〉桑 淡い褐色の樹皮を持つ落葉高木。緑色の葉は蚕のエサとして古くから養蚕のために栽培されてきた。植物としては珍しく、亜鉛を多く含む。木イチゴに似た紫黒色の実は、食用にされることも多く、英名の「mulberry」は、果実の形状が「berry」(水分の多い小果実・strawberry=イチゴなど)に近いことにちなむ。食品の問い合わせは、「マルベリー」(024・574・2300)、「道の駅ふくしま東和」(0243・46・2113)まで。
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