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(2)窮地の担い手 (2005年12月9日)収益悪化労働者を直撃 伐採進まず森も「高齢化」
いわき市の「磐城造林」は県内でも最大規模の造林業者。社員は12人ながら、市内にある760ヘクタールの社有地で植林も行っている。しかし、社長の小野好郎さん(76)の表情は暗い。森林を取り巻く悪循環の影響が労働者たちの足元にも及んでいるのだ。 木材価格は下落する一方、労賃などの経営コストは高騰を続けている。林野庁の調査によると、1961年の作業員の賃金は1日平均768円だったが、2003年は15倍の1万2110円に。かつてはスギ1本で作業員6人の1日の賃金が払えたが、今は5本切ってやっと1人分だ。収益が悪化する中で「社員の最低限の生活を保障するのも厳しい」と小野さんは嘆く。 労働環境の悪化から、県内の林業従事者は激減している。深刻なのは、2000年までの10年間だけで3割(1011人)も減ったことだ。残った2296人の4割は60歳以上で、県はさらに数は減るとみている。 小野さんは「農業は凶作があっても翌年に頑張ればいい。でも、木は一人前になるまで50年かかる」と林業経営の難しさを語る。その間に台風や雪害で傷がつけば、木材の価値は大きく下がる。150円の苗木を50年かけて育てても、成長した木は2000円ほどにしかならない。「林業に経営という言葉は成り立たない。社会奉仕みたいなものだ」と小野さんは皮肉を込めて話す。 戦後に植えられた県内の人口林の多くは今、伐採期を迎えつつある。スギの標準伐採樹齢は45年。現在最も多いのは“31〜40年生”で、今後10年に人工林の3割近くが伐採樹齢に達する。だが、木材価格低迷から森林所有者の多くは伐採をせず、新たに植林する人も少ないため、「森も高齢化が進んでいる」(小野さん)という。 山から切り出された木は市場に運ばれ、製材業者により加工される。生産量が東北一と言われる「協和木材」(塙町)によると、その製材業者も「経営は厳しい」(佐川広興社長)という。消費者やハウスメーカーの求める品質水準が高まり、含水率や強度にばらつきが多いスギより、寸法の狂いの少ない欧州の加工材の人気が高いのだという。 荒廃が進む森林の整備にボランティアやNPOの力を借りようという声がある。しかし、急しゅんな傾斜地で危険な機械を使う現場作業は、素人には難しい。 「つらい経営をやめられるのならやめたい。でも、残された山はだれが面倒をみるのか」。小野さんは胸中を語る。 森は、林業に従事してきた人たちにしか守れない。彼らが窮地に立たされた現状は、森林の保全という目標を根幹から揺さぶりかねない。
〈林業従事者〉 森林所有者が自ら木の植林、育成、伐採をするケースはほとんどなくなった。県内の森林所有者の56%は26森林組合のいずれかに加入し、組合所属の約640人の作業員が現場作業をしている。植林や伐採を専門にする造林業者にも作業員がいる。
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