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<6>介護受け皿不足深刻

 今年3月に渋川市の無届け有料老人ホーム「静養ホームたまゆら」で発生した火災は、入居者10人が死亡する大惨事となり、防災面や介護面などでずさんな管理態勢がクローズアップされた。入居者の多くは東京都内で生活保護を受けるなど、経済的に恵まれず、行き場のない人たちだった。こうした高齢者に対する医療・介護の受け皿不足は、火災から約5か月を経た今も変わっていない。

 両親と弟の4人で暮らしていた前橋市の女性(52)のケース。母親(80)は4年前に心不全で倒れ、がんや脳梗塞(こうそく)なども重なったため、治療やリハビリで入退院を繰り返した。現在は、市内の病院に入院していて、意識ははっきりしているが、半身がまひし、1日中点滴を受けている。

職員との会話を楽しむ介護施設利用者。介護が必要な高齢者の受け皿が不足している(11日、渋川市内で)

 小泉内閣の医療費抑制方針以降、長期入院に対する診療報酬が下がり、病院は経営を成り立たせるため、2〜3か月で退院を促す例が増えた。女性の母親も今春、「もう期限だから」と4か所目の病院を退院させられた。必死に受け入れ先を探し、現在の病院に入院できたが、いつまでいられるかはわからない。

 弟も重い脳障害があり、女性が働きながら在宅介護を続けてきたが、自らの負担が大きかったため、今春から仕事を辞めて介護に専念している。生活費は両親の年金だが、半分は母親の治療費に消える。「両親がこつこつためてきた貯金を崩し、どうにか食べているだけ。将来はものすごく不安」と漏らす。

 民主党や共産党などは衆院選に向け、高齢者が長期入院する療養病床の削減方針転換を掲げ、ほかの政党も医療・介護施設の拡充をうたう。だが、女性は「そうなればいいが、高齢者が増え、少子化で納税者が減っていく中で可能なのか。政権が変わったとしても現状は変わらない気がする」と語った。

 かつて「たまゆら」の入居者を担当したことのある女性ケアマネジャーは、「長期入院ができなくなり、患者は体調や生活基盤が整わないまま病院を追い出される。一方で介護施設は医療行為が何でもできるわけではない。治療が必要なほどではないが、家ではみられない人が入る施設がない」と窮状を訴える。

 介護施設の受け入れが可能な場合も、高額なことが多く、これまで担当した高齢者は、本人の年金でやり繰りがつかないケースが大半。「援助する家族がいなければ、家にも帰れず施設の費用も出ない。介護態勢が整わないと知っていても、『たまゆら』のような無届けの低額施設に飛びついてしまう人がいる」という。

 ケアマネジャーは、衆院選で複数の政党が掲げる年金の最低保障額に注目し、「年金が月に手取り3万円台の人がいくらでもいる。年金を上げるか、年金で入れる施設を造ってほしい」と願いを込める。(横山航)

各党のマニフェスト

【自民】介護職員の処遇改善に努める事業者に対して給料月平均1・5万円引き上げに相当する金額を助成

【民主】全国どこでも介護の必要な高齢者に良質なサービスを提供。介護労働者の賃金を月4万円引き上げ

【公明】訪問介護サービスの利用者数を10年で100万人に。在宅サービス充実

【共産】介護保険の国庫負担割合を5%引き上げ。保険料・利用料減免制度創設

【社民】医療・介護保険の国の負担割合引き上げ、保険料・利用料を減免

【国民新】老々介護家庭に月5〜10万円支給。介護職員給与を30%引き上げ

2009年8月12日  読売新聞)
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