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【10】豚肉料理コンテスト名物作り前橋を元気にトロトロに煮込んであめ色になった角煮、炭火で香ばしく焼き上げた豚めし、みそ風味のタルタルソースが利いた串焼き。特製ソースがからまる軟らかなカツ――。 前橋市の豚肉料理ナンバーワンを決めるコンテスト「T―1グランプリ」。57店が参加し、決勝には個性的な6品が残った。 市内の観光業者らでつくる「ようこそまえばしを進める会」が昨年11月から始めた。同会は、「TONTON(とんとん)のまち」をキャッチフレーズに、特産の豚肉で市の活性化に取り組む。 仕掛けたのは、同会のグループリーダーで、飲食業などを手がける「スワン」社長萩原康充さん(68)。「人を呼べる名物料理と、市民が一緒になって熱くなれるきっかけを作りたかった」と語る。 ◎ ◎ 前橋はかつて「生糸(いと)のまち」として栄え、西洋料理店が軒を連ねた。ハイカラな料理として、カツライスなどの豚肉料理も人気だった。市内には今もソースカツ丼などを出す店が多い。 しかし近年、次々とできた大型商業施設に客を取られ、市街地は活気を失っている。 「古くからなじみがあり、質の高い県産の豚肉を使った料理なら、地元だけでなく観光客も呼び込める」と、萩原さんは考えた。初めは批判や反対もあったというが、萩原さんの熱意が伝わり、コンテストには個性的で熱のこもった料理が集まった。 決勝に進んだ「クローバーピギーズ」店長の新井裕樹さん(29)は豚肉が嫌いだったという。しかし、赤城南麓(ろく)で育てられる「和豚もちぶた」を口にして驚いた。くせがなく、ほのかな甘味とうまみがある。「こんなにおいしい豚肉があるんだ。地元の人に知ってもらいたい」と約1年前、店を開いた。コンテストでは、肉のうまみがよくわかるしゃぶしゃぶで勝負する。 「そば処(どころ) 大村 総社」の柴崎清一さん(39)は、伝統のソースカツ丼で決勝に臨む。「40年間継ぎ足しながら守ってきた味が支持されてうれしい」。参加したことで、店に一体感や、もてなしの心も生まれた。約40年、月2、3回は通う男性客(44)は「サクッ、モチッとしたカツにたれが絡み、絶品。無性に食べたくなる」という。 関心が高まったことで、各店舗の客足も伸びた。競争が共栄につながっている。 前橋の市街地はここ十数年で急激に寂しくなったという。6店の経営者は平均年齢35歳と若いが、それぞれの脳裏に、前橋が元気だった頃の記憶が刻まれている。「市民が誇れるおいしい物を作り出し、笑顔があふれるまちにしたい」 コンテストは16日から、市民らが参加できる一般審査が始まり、3月には頂点に立つ1品が決まる。「『とんとん』は、心の扉をノックする音にも似ている」と萩原さん。一緒に考え、食を通して笑顔が連鎖するまちに――。おいしい豚肉料理を選ぶ市民の1票が、前橋を元気にするビタミンになるかもしれない。(神園真由美) (おわり) (2010年1月15日 読売新聞)
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