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湖面1号橋生活道路か景観阻害か29日午前、県庁を三日月大造国土交通政務官がひそかに訪れた。予算編成のさなかの急な来訪だったが、大沢知事と二人の副知事らが向かい合った。 1時間半に及んだ会談の中、三日月政務官は「もし、湖面1号橋をやめたらどうなるか」と切り出した。週明けに迫った橋脚工事入札延期の打診だった。県側は、「1週間前に地元と大臣が意見交換をしたばかりだ。地元の感覚からしても、それはすべきでない」と、建設継続を主張した。 ◇ 1号橋は、ダム湖を横切る県道が通り、川原湯・川原畑両地区の代替地を結ぶ。24日に長野原町で開かれた前原国交相と住民の意見交換会では、両地区住民から推進を求める声が相次いだ。 「一部の人から要らないと言われているが、代替地に移れば川原湯と川原畑を結ぶ生活道路になる」。川原畑地区ダム対策委員長の野口貞夫さん(66)は、前原国交相に、とつとつと訴えた。 今月14日、地区内の神社で行われた鳥追い祭りに、野口さんの姿はあった。午後9時過ぎ、真っ暗闇の中、太鼓に合わせて「鳥追いだー」と歌いながら集落を練り歩く。参加した22人中、住民は9人。あとは国交省の職員や工事に携わる建設業者ら。「さみしいねえ。こんな状況になるとは」。神社総代も務める野口さんは、ぽつりとつぶやいた。 2001年に国と補償基準合意したのを機に地区では住民の転出が続き、当時の93世帯から現在は20世帯弱にまで減った。同地区の無職男性(68)は、「人口減で近い将来、川原湯と川原畑の集落は一緒になると思う」と言い、「若者は橋が無くても車で行けるが、年寄りは橋が無ければ歩いて1時間かかる」と訴える。 一方で、民主党県連や市民団体は「橋が本当に生活再建に役立つのか」と疑問視する。 「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」の事務局長を務める角倉邦良県議は「1号橋はダム無しの生活再建の支障になる可能性が高い。国はその分の予算を補償に回すべきだ」と主張する。橋ができれば、現在の川原湯周辺の景観を阻害し、温泉街の再建にも妨げになる、との声は市民団体からも強い。前原国交相も27日の参院予算委員会で「必ずしもダムを前提としたインフラ整備を続けるのが真の生活再建ではない」と、従来の生活再建策を見直す考えを示唆していた。 1号橋の事業費は約52億円。費用対効果への疑問も出される。ある民主党国会議員は「国が八ッ場に出せる金にはおのずと限度がある。使う人数に比べて費用がかかり過ぎ、他の生活再建事業に回したほうが地元のためだ」と訴える。 ◇ 三日月政務官の来県から一夜明けた30日。地元では怒りの声が上がった。「会って何を言っても同じということか」(高山欣也・長野原町長)、「国は『生活再建』と口で言うだけで信用できない」(川原畑地区の女性会社員)。橋脚予定地にあった郷土料理店を閉めて昨年、中之条町に引っ越した茂木安定さん(74)は、ため息をついた。「今さら橋脚ができないと言われても。やり切れない」 地元が地域の未来図の一部に位置づける未完の橋。国の対応いかんでは、開きかけた住民との対話の扉を再び閉ざす火種になりかねない。 (2010年1月31日 読売新聞)
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