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ダム湖観光

にぎわい戻るか見方二分

ひなびた雰囲気が魅力の川原湯温泉街。ダム湖岸で生まれ変わる構想を描いてきたが……(1月30日、長野原町川原湯で)

 1月10日、長野原町内の集会所で行われた町の成人式。色とりどりの晴れ着や、スーツに身を包んだ新成人60人が旧交を温めた。

 大学に進学して神奈川県で一人暮らしをしている同町川原湯出身の篠原真哉さん(19)は、久々に訪れた故郷に驚いた。「昔あった建物がなくなり、見たことのない橋ができていた」。さらに、将来への不安もよぎる。「八ッ場ダムを造って新しい温泉街ができて、観光客は来るだろうか。温泉地は古い旅館や街並みに人気が集まるのではないか」

 ダム湖畔の温泉宿の泊まり客が、エクササイズセンターで汗を流し、湖面には水陸両用バスが往来する。国道沿いの道の駅では、地元の農産物を販売――。住民の多くは、ダム湖を柱とした観光振興の未来図を描いてきた。

 「二十数年間、ダム湖を中心とした町づくりに日夜、励んできた。突然、ダム湖無しの観光と言われてもすぐに切り替えられない」。川原湯温泉観光協会の樋田省三会長は24日、意見交換会で町を訪れた前原国土交通相をまっすぐに見つめて訴えた。温泉街で商店を営む女性(80)は「国が再建してくれると信じて、みんなボロボロの家で我慢してきたのだからダムは造ってもらわないと困る」と悲鳴を上げる。

     ◇

 水陸両用バスをダム湖観光に活用している例は、すでに栃木県日光市にある。同市などは2012年完成予定の湯西川ダムを観光資源にするため06年から、近くの川治ダムで水陸両用バスを実験的に導入した。

 湯西川温泉駅を出て、川治ダムの湖面を横切り、再び駅に戻る約1時間半のコース。年5か月の運行で、利用客は07年から3年連続で1万人を超えた。市は「こんなに利用してもらえるとは思わなかった」と手応えを示す。

 だが、ダム湖観光は地元の思惑通りにいかない例が多いのも事実だ。

 神奈川県相模原市の相模ダム。1947年に、神奈川県で最初の大規模な人造湖として完成、旧相模湖町には73年に年間約390万人が訪れ、観光収入で潤ったが、今、同地域の客数は6分の1以下に減った。「かつてダムは観光資源だったが、観光客の好みが変わって湖だけでは難しくなった」(相模原市)。飲食店や射的場などの娯楽施設でにぎわった湖畔は徐々にさびれた。

 松蔭大学観光文化学部の古賀学教授(60)は「ダム湖での観光は難しい」と指摘する。「よほど取り立てたものがなければ、立ち寄って10分湖面を眺めて帰って行く。八ッ場はダムにこだわらず、自然環境か、水辺の環境か、温泉か、何を観光に生かしたいのかをしっかり考えたほうがいい」と言う。

 群馬大学社会情報学部の寺石雅英教授(48)のように、ダム中止問題で一躍注目を浴びたことを「千載一遇のチャンス」として、八ッ場の将来を前向きにとらえる向きもある。寺石教授は「悲観的になって萎縮していたら何もできない。考え方をまとめればきっと成功する」と、早期に観光への意識を集約する必要性を強調する。

 地域再生のカギとなる「にぎわい」の未来図はすれ違ったままだ。

2010年2月2日  読売新聞)
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