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移転補償費 枯渇買収継続か 国方針見えず「もうこの家も限界。雨が降れば2階は雨漏りするので、1階だけ使っている。移転するのだから修繕しても仕方ないと思って我慢してきたが……」 長野原町林の男性会社員(56)は、築半世紀を過ぎた二階家の玄関先で、ため息をつく。 男性の自宅は本来、八ッ場ダム建設事業に伴う移転対象ではない。だが、隣組の他の家は水没予定だったり、町道の予定地だったりして、すでに多くが移転。男性も一緒に移転を希望し、国土交通省八ッ場ダム工事事務所に申し出た。だが、昨年9月の政権交代の後、何の音さたもない。 昨年10月、同事務所の予算のうち、今年度分の移転補償費が底をつき、住民が土地の買い取りを希望しても応じられない異常事態になった。 例年は、年度末で補償費を使い切るよう買い取りを進めているが、「8、9月に予想を上回るペースで買い取り希望があった」(同事務所)。地元関係者は、「衆院選で民主党が勝つと言われた頃から町の雰囲気が変わった」と言う。ダム計画中止で、国が用地買収をストップするかも知れない、との憶測が流れた。 先月24日、長野原町を訪れた前原国交相にも不満がぶつけられた。 「来年度予算案に150億円を計上したが、水没予定地を買い上げる原資として、本当にやってもらえるのか」(川原湯地区住民) 「生活関連事業は、必要なものは行っていく。その中で優先順位を付けなければ」。国交相は明言を避けた。 今年度、予算が尽きるまでの半年間で国が買ったのは約20ヘクタール。ダム計画による買収予定はまだ約80ヘクタールが残っており、すべてを買うには今年度の数倍の予算が必要とみられる。新年度に国がどれだけの用地補償費を確保するかに注目が集まる。 一方で、林地区の男性(47)は淡泊だ。「ダムは、できてもできなくてもいい。うちの土地さえ買ってくれればいいんだ」。すでに移転先の土地を確保し、生活への不安は感じさせない。だが、男性も町の将来に対しては、「ダムができなければ町に金が落ちないから心配」と不安をのぞかせる。 ◇ 町財政にとっても、ダムは貴重な「財源」だ。 町では、水没予定地の81%にあたる257・6ヘクタールがすでに国有地になった。国有地には固定資産税が課税できないため、移転する前の家屋や土地に課されていた分は、町にとっては減収につながる。町の固定資産税は1999年度の8億4400万円から、08年度には、6億4000万円に減少した。代わりに町はダム完成後、減収分を補う規模の交付金を国から受けることになっていた。しかしダムができなければ、交付されない。 前原国交相は昨年末、ダム中止後の建設予定地住民などへの補償のための新法案について、「スケジュール的に難しい」と、今国会への提出見送りを表明した。ダム中止を求める市民団体からも「地元が放っておかれるのでは」と懸念の声が上がる。 水没予定地に広がる広大な国有地。住民が苦渋の末に手放した故郷の土は、行く末が決まらぬまま野ざらしになっている。 (2010年2月4日 読売新聞)
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