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予定地住民複雑な思い各地で着工凍結前原国土交通相は昨年末、全国143のダム事業のうち、本体工事に未着工のものなど89ダムを再検証の対象にすると発表した。このうち11ダムは八ッ場と同様、本体工事直前に凍結され、地元関係者に波紋が広がっている。 栃木県鹿沼市上南摩町。市の中心部を抜けて山あいの県道を進むと、茶色い地面がむき出しの山が姿を現す。水資源機構が進める南摩ダムの建設現場だ。 首都圏の治水・利水を目的とした思川開発事業で、貯水量5100万立方メートルの南摩ダムと地下導水路からなる。1969年に調査が始まり、長い反対運動を経て、水没予定の80世帯は2008年までに移転を完了した。15年の完成を目指し、本体工事の際に川の水を迂回(うかい)させる転流工工事まで進んだ。 「中止になれば、下流のためにと涙をのんだ我々の苦労が水の泡になる」。6年前に水没予定地から市内の別の場所に引っ越した駒場偉男さん(70)は語気を強める。20年前に亡くなった父の利左衛門さんは、反対運動初期のリーダーだった。「家に(水資源機構の前身の)公団の人間が来ても話をするな」と厳しく言っていた父の記憶が今も残る。同市内の代替地に住む女性(52)も、移転後に世を去った父親をしのび、「何のために故郷を出て来たかわからなくなる」とやり切れない表情だ。 一方で「ダム反対」の声も再び頭をもたげ始めた。計画変更までの一時期、移転対象になっていた広田義一さん(75)は、今は数少ない反対派の一人。「検証で不要と判断されれば、私が正しかったことの証明になる」と、ダム中止を求める市民団体などとの連携を強めるつもりだ。 三重県伊賀市の川上ダム。建設促進期成同盟会会長を務める元公務員の西山甲平さん(73)は「検証は十分にしてきたのに、また凍結して検証とは。何十年検証に時間を費やすつもりなのか」と憤る。 同ダムは、国交省近畿地方整備局長の諮問機関・淀川水系流域委員会が01年から議論を重ね08年4月に「不要」と結論づけたが、同局が同年6月、これを無視する形で整備計画に盛り込んだ経緯もある。西山さんは、工事が延びるほど、工事事務所維持などの費用が膨らむと指摘。「凍結の間にも費用は膨らみ、いずれ水道料金値上げとしてはね返る」と、早期完成を主張する。 こうした人々が「八ッ場」を見る目も複雑だ。 南摩ダムには反対の広田さんだが、八ッ場ダム中止表明には批判的だ。「このまま中止となれば、地元は不安だろう。無駄を止めるのは当然大事だが、八ッ場はここと違い、補償だってまだ中途半端」 一方で、秋田県の成瀬ダム中止運動にかかわっている奥州光吉(57)さんは「コンクリートによる公共事業をやめていくのを国民が支持している限り、前原大臣の八ッ場ダム中止も揺るがないだろう」とみる。 政権交代直後、全国的に注視される中で、中止表明された八ッ場ダム。未来が見通せなくなったいくつものダムの地元住民が、複雑な思いで八ッ場の行方を見つめている。(おわり) ◇ この連載は、清岡央、武田潤、石川貴章が担当しました。 (2010年2月5日 読売新聞)
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