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熱い思いに「良薬」を

 「実はもう、治療はしてないんだよ。これを飲むだけ」。病状を問うと、背広の両ポケットから、モルヒネと何種類もの鎮痛剤を取り出した。薬の主は、サッカー・J2ザスパ草津の運営会社社長の大西忠生さん(62)。今季全日程を終えた12月の夜のことだ。

 創設時からGMとしてザスパを引っぱってきた大西さんが、病魔に侵されていると伝え聞いたのは今春。6年前に父をがんで亡くした経験もあり、その話に触れるのには抵抗もあったが、試合前に声をかけてみると、チームと関係ない個人的な質問にもかかわらず、快く答えてくれた。

 大西さんが肺がんと診断されたのは3年前。転移のため手術は不可能とされ、J2に昇格した今季は、抗がん剤治療のため短期入院を繰り返した。吐き気や手足のしびれなど副作用は激しいが、それをこらえ、毎試合に顔を出していた。

 前社長が退任した7月以降は、GMの業務だけでなく、社長としてチームの一切を取り仕切った。低迷が続くチームの強化策はもちろん、相次ぐ不祥事の中での自治体やJリーグとの折衝、マスコミ対応……。

 治療を中止したのは、そうした激務の中でのこと。「副作用で動けなくては仕方がない。残りの時間、自由に全力でやりたい」。それが理由だった。薬を見せてくれた夜、大西さんは話してくれた。「ザスパをつぶしてはいけない。そのためには何でもやる」

 身を賭(と)して戦う姿に、誰よりも強いザスパへの熱い思いを感じた。来季の躍進を信じ、一つでも多くの、勝利という“良薬”を願わずにはいられない。(田島大志)

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