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(上) 再出発 観光に活用、自立正念場
片品村営スキー場だった高台は、ダム建設計画を経て、運動公園に生まれ変わった。5月上旬にはオープンし、合宿の学生らの歓声が響くはずだ。 「今まであった運動施設は老朽化が激しかった。観光で生きる戸倉は、この施設で大きく変わる」 地元住民による戸倉ダム対策委員長の萩原一志さん(49)は「春」を待つ住民の声を代弁する。
だが、5年間の工事中断を挟み、2003年12月、大口の事業費を負担する埼玉県が「水需要の縮小」を理由に撤退を表明。東京都なども追随し、同月中には最終的な中止が決まった。 地元支援事業は曲折もあったが、計約35億円分は実施が決定。間違えて掘った穴を埋め戻すかのような、「村の復旧」が始まった。 運動公園の一部もその一環。支援事業に基づく地域振興策は、尾瀬の観光情報発信拠点となる「尾瀬自然文化博遊館」(仮称)や森林公園、散策道の建設など観光が柱となり、尾瀬の玄関口へ追い風としたい考えだ。 村は4月から運動公園の運営を、指定管理者制度に基づき、行政区としての戸倉地区に委託した。支援事業で今後できる新設施設はすべて戸倉地区に委託し、「住民主導」で活用していく考えだ。 実際の企画と運営は、行政区組織内に設ける施設運営委員会があたる。従来のダム対策委員会は、施設運営委員会に一部移行する形で、今夏までには解散する予定だ。 しかし、指定管理者となれば、施設を無償で貸与される代わりに、赤字を出した場合は住民側の負担となる。年間の総土木費が3億円余りの同村にあって施設建設は“特需”といえるが、「完成後、逆に重荷とならないか」という懸念も抱える。 「20年後、30年後、戸倉が自立して生きていけるよう、地域の仕組みを根本から見直す大事な時」。萩原さんは力を込める。 平成の大合併では、一線を画した村が、「ダム建設の村」から脱却し、本当の意味で自立できるか。遅い春を迎えた住民の吐く息は例年になく熱を帯びる。 (田島大志) ◇ ◇ ■戸倉ダム 主に埼玉県、東京都の利水と、利根川水系の治水のため、総貯水量9200万立方メートルの重力式コンクリートダムとして計画。1987年度に事業着手され、総事業費は1230億円が見込まれた。当初は2000年度の完成を目指していたが、周辺でクマタカの営巣が確認されたため、96年度から約5年間、工事を中断。工期を08年度まで延長して再開後、間もなく中止が決まった。
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